神々しい謎生物が列をなす。メキシコ/テキサスの境界あたりに栄えた「ペコス川文化」の芸術がものすごくカッコいい

雑誌の表紙に一目惚れしたのなんて何年ぶりだろうか。この…この細長い…何? なんか光線吐いてるメカ・カピバラみたいなやつ? すげえカッコいいんだけど、何なのかさっぱり分からない…。
なお論文本体を読んでもその正体はさっぱり分からないままだった。いや何なんだよこの生き物。神?

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↓メカっぽい手足。口から光線を吐いてるようにも見える。つまりこれは古代の生物兵器を表していたんだよ…! ナ、ナンダッt(ry
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Mapping the chronology of an ancient cosmovision: 4000 years of continuity in Pecos River style mural painting and symbolism
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adx7205?adobe_mc=MCMID%3D18543336382053489151127996355894951958%7CMCORGID%3D242B6472541199F70A4C98A6%2540AdobeOrg%7CTS%3D1764172659

この謎生物を含む壁画は、アメリカ南端のテキサス州とメキシコ北部との境界あたりを流れるペコス川に沿ったジャングルの中にあるという。
ずっと年代不明だったのだが、今回の調査でだいたいの年代がわかった。最古のものは5760年から5385年前(C14補正値、半減期に近いくらいの年代が出たのかな…?)。
最新の部分で、おそらく1370年から1035年前とされ、つまり4,000年以上に渡って描かれていただろう、という。

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面白いのは、時代を通して画風がほぼ固定なこと、「暗い色の上に明るい色を重ねる」といった、明らかに共通する色の重ね方が使われていること。赤は必ず黒の上、黄色は赤と黒よりも上、白はすべての色の中でいちばん上、という感じで、立体感や画面の効果を計算した色の置き方をしているそうで、これらの技法が世代を通じてどのように継承されていたのかは謎。

また、各場面はマンガのように連続した物語を描いているのではとされるが、具体的な物語として読み取ることは困難。
これはたぶんネコ科の動物が狩られているところなのだろう。矢が突き刺さり、血が出ている。…のだが、なんで尻尾3本もあんの? とか、二足歩行してんのは何で? とかは謎。あと右側にあるトゲトゲと、ネコに見えない細長い人は何だ…?

幼稚園児とかが描いた絵にこういうのありそうなんで、子供に解読してもらったほうが意味がわかりそうな気もする。
この文化の絵、とにかく「なんか縦長」というのが特徴。意味はわかんない、でも眺めているとクセになる。そんな味のある絵ばかりで楽しい。

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絵が描かれていた時代、この地域は干ばつに襲われていたのでは? という説もあるらしいが、だとしたら、「描けば出る」のノリで獲物の絵を描いて狩猟祈願をしていた可能性もありそうだが、いかんせん物的な証拠が何もなくて分からない。
メソアメリカの文明、マヤやアステカのような目立つ遺跡を残した部分以外は未調査のものが多いんで、たぶん「これから」なんでしょうね。


ちなみに最近だと、わりと近い地域ではコロンビアの岩絵の調査も進んでいる。
こちらの岩絵は約1万2千年前くらいまで遡るとされているので、今回の岩絵よりずっと前。そして面白いことに、「全く様式が違う」。生物のデザインも、題材の選び方も、使う色のチョイスすら違うんで、おそらく全く別系統の様式なのだ。

コロンビアの密林の奥に描かれた岩絵と描かれたものたち 岩絵の意味はどこまで読みとけるのか
https://55096962.seesaa.net/article/504186484.html


メソアメリカは、DNA調査によって過去、複数回に渡って人の移住の波が訪れていたことが分かってきている。中には既に絶滅してしまった先住民の系統もあったことが判明している。
同じコロンビアの事例だが、調査したところ「遺跡を作った古代人を調査したら、現在そこに暮らしてる先住民とは全く別系統の古代人でした。現在の住民にその古代人の子孫はおらず、住民がのちに中央アメリカから南下してきたグループに置き換えられたことがわかりました」という結果が出て、論文にちょっとややこしい注意書きがつけられたことがある。

古代人のDNA調査と「倫理声明」、最近の調査って事前調整の注意書きがけっこう多いよね…という話
https://55096962.seesaa.net/article/515772715.html


なので、メソアメリカの古代文明・遺跡だと、

・古代文明/遺跡と現在の住民が一致しない可能性がある
・古代人の子孫が残っていない(断絶した)ケースもある
・子孫が残っていても、人の移動等により文化どころか言語すら置き換えられてる場合がある

といった可能性を考えなければならない。
そもそもマヤ文明の時代ですら、人の行き来はあっても言語が統一されず、「マヤ諸語」だった地域だ。(お互い通じないレベルの別言語までまとめた名称) 文字の誕生するマヤ以前の時代の諸民族の文化って、研究するのめちゃくちゃ大変なんだろうなってのは想像がつく。

でも、だからこそ謎が多くてワクワクするんですよね。古代文明はやっぱこうでなくちゃな。