クリスマスといえば…。というわけで、シチメンチョウの家畜化の歴史について調べてみた

もうじきクリスマス。クリスマスといえばシチメンチョウ。というわけで今回はシチメンチョウの話。

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シチメンチョウは新大陸で家畜化された数少ない動物だ。新大陸産の鳥なので、当然、ヨーロッパのもともとのクリスマスにシチメンチョウを食べる風習などない。
あれは新大陸に進出していったヨーロッパ人が現地人に振る舞われたのがきっかけで定着した最近の習慣らしく、ヨーロッパにシチメンチョウを初めて持ち込んだのはスペイン人らしい。
なのでクリスマスにシチメンチョウを食べるのは主に北米。実際いままで一緒に仕事した連中でクリスマス・ターキーにこだわってたのはカナダ人とアメリカ人だけである。

だが、このシチメンチョウの家畜化の歴史がどうも分かりづらい。検索しても出てくる情報がまちまちで諸説ありみたいになってる。
なので元になってる論文を辿って自分でまとめておくことにした。

まず、シチメンチョウは基本的にニワトリと似たような生態、似たような経緯を経て家畜化されている。つまりニワトリ同様、現在でも、野生種と家畜種の2種類が存在する。
野生種の中にも亜種があり、それぞれの分布図は以下のようになっている。
家畜種はすべて、亜種のうちのひとつ Meleagris gallopavo から派生しているが、この Meleagris gallopavo には野生種もいる。

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Introduction to the special issue - Turkey husbandry and domestication:
https://www.researchgate.net/profile/Erin-Thornton-5/publication/305663772_Introduction_to_the_special_issue_-_Turkey_husbandry_and_domestication_Recent_scientific_advances/links/5ae0da550f7e9b2859480ae8/Introduction-to-the-special-issue-Turkey-husbandry-and-domestication-Recent-scientific-advances.pdf

これは家畜のニワトリが、野生のニワトリの種のうちセキショクヤケイから派生しているのと似ている。
家畜ニワトリは、他のヤケイではなくセキショクヤケイからのみ派生しているというのが現在の有力説だ。そしてチャボとブロイラーの見た目も体格も全然違うのと同じように、家畜化されたシチメンチョウにも様々な品種があり、ブロイラーなみの体格を持つ肉量の多いものから、見た目の美麗な小型のものまで作られている。

シチメンチョウは家畜化されてからの年月が浅いため、野生のものとの遺伝的な差異は少ないらしい。
たまに家畜シチメンチョウが逃げ出して野生のものと交雑したりもしているので、誰にも飼われていないからといって野生種とは限らない。これも、家畜ニワトリが逃げ出してヤケイと交雑することがあるのと同じだ。
野生のシチメンチョウは羽根が真っ黒で、家畜化されたものは白くなる傾向にあるらしく、完全な野生種かどうかは白い羽が混じってるかどうかでもある程度見分けがつくらしい。


現在の家畜シチメンチョウは亜種のうち一種からのみ派生しているわけだが、残る亜種についても家畜化の試みはされていた、または一時期家畜化されていたようで、遺跡から出てくる骨を分析すると他の亜種のこともあるらしい。マヤ人が飼育していたと思われるものと、アメリカ南西部で家畜化されたと思しき系統もある。ただしこれらは現在の家畜シチメンチョウには繋がっていない。

スペイン人が到来したあと、メキシコもユカタン半島も疫病などで壊滅的になってしまうので、家畜化された種、そのときに再野生化してしまったのではないかと推測する。何しろ人口の9割くらい消失している。家畜飼ってる場合じゃなかったんでは…。

以前まとめた以下を参照。

スペイン人の南米開拓時における人口減少の資料その2
https://55096962.seesaa.net/article/200909article_5.html

 1518年 25.2万人(推定)
 1532年 16.8万人(推定)
 1548年 3.6~6.3万人

遺跡から発掘されるシチメンチョウの骨にはいろんな系統があるのに、家畜シチメンチョウの遺伝的な多様性が少ない、という論文もあるが、まあ飼育してた人間の遺伝的な多様性も壊滅してるので、飼育される側もそりゃそうなるだろうなという感じ。

なお、マヤ人はイケニエにするシチメンチョウにトウモロコシを与えて肥育していたようなので、農場と養鶏(七面鳥)場がセットの構造で、ある程度の人口規模を持つ都市で飼育していたのだろう。わざわざトウモロコシ与えておいしく太らされていたシチメンチョウは、神様に捧げるご馳走でもあったわけだ。

Diversity of management strategies in Mesoamerican turkeys: archaeological, isotopic and genetic evidence Open Access
https://royalsocietypublishing.org/rsos/article/5/1/171613/93843/Diversity-of-management-strategies-in-Mesoamerican

探せば色々と研究は出てくるが、肝心の「家畜化されたのがいつだったのか」ははっきりしない。
これも理由は論文そのものに書かれていて、家畜化された歴史が浅く、野生種との間で遺伝的な差異はほぼ無いためDNA分析してもよくわからない。骨の大きさや形状でも見分けがつきにしい。

生前の食物としてトウモロコシを大量に食べてるなどすれば明らかに飼育されていた個体と分かるし、一箇所から大量のシチメンチョウの骨が出てくれば狩猟の結果というより大量に飼育してた可能性が高いので、そうした要素で家畜化されていたかどうかを判断するしかない。

なので、「早ければ紀元前1000年、遅くても紀元前後には家畜化されていた」くらいの幅になり、「500年前にスペイン人が来たときには既に家畜として確立されていた」「その当時は複数系統の家畜種が存在した可能性が高いが現在残っているのは1系統のみ」が確定事項となる。



以上、「諸説あり」の中身を分解するとこんなかんじ。

つまり「アステカ人がシチメンチョウを飼いならした」は「アステカ人以前から飼われていた」だし、「マヤ人がシチメンチョウを飼いならした」のは間違いではないけど「その系統は現代の家畜種に繋がってない」。あと「シチメンチョウの家畜化は二箇所で行われた」も、間違いではないが、「最低二箇所で行われたのは事実だが実際にはあちこちで同時に行われていた可能性が高く、現在の家畜種としては一系統のみしか残っていない」が現状になる。


(AIに検索させて調べさせると諸説あるのを全部併記してきてクッソ分かりづらくて使い物にならないけど、引用の多い論文を10本くらい年代順にピックアップさせて順番に読むのは有効。それが自分の求めてる答えにたどりつく最短の方法っぽい…。)

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<補足資料>同位体(アイソトープ)分析について

骨の成分の分析で、生前食べていたものが何なのかある程度分かる。今回の、シチメンチョウがトウモロコシで飼育されていただろうという部分では、この分析法が使われている。

https://ura.sec.tsukuba.ac.jp/archives/733

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