人類の祖先種はアウストラロピテクスの中の「どれ」なのか。進化論懐疑派も入り乱れてカオスになる
年末だったので、騒動を見てはいたものの内容をまとめきれていなかった。改めてメモしておきたい。
人類の祖先種が何なのか、について、専門家・専門外の人入り乱れてなぜか謎の議論沸騰になっている。
以下のサイトでもコメント欄がなんか盛り上がってて、わけわからんことになっているのが見て取れる。
Scientists claim 'Lucy' may not be our direct ancestor after all, stoking fierce debate
https://www.livescience.com/archaeology/human-evolution/scientists-claim-lucy-may-not-be-our-direct-ancestor-after-all-stoking-fierce-debate#viafoura-comments
・人類の祖先種が以前は定説だったアウストラロピテクス・アファレンシスではなくアウストラロピテクス・デイレメダだという論文が出て、賛成/反対入り乱れての議論になっている
・そもそもアウストラロピテクス・アファレンシスを人類の祖先種としたことに確証はなかったことが明らかになりつつある(と自分には見えた)
・人類の進化の研究は、いままでロマンやストーリーありきで進め過ぎていなかったか? という問題提起
・そこに「そもそも人類が猿のようなものから進化したとは信じがたい」という福音派や、「アフリカの人類は猿から発達したにしても我々は違うのではないか」といって100年前からのタイムスリッパー優生種思想者が乱入
…という感じ。
うん、なんか楽しいな。ていうかアメリカなんかだと未だに地球は平らだと信じてる人もいるくらいだし、まあ英語圏の議論がカオスになるのはよくあるやつ。
ただ、ここで出てきた問題の幾つかは、認識しておいたほうが良さそうな内容だと思う。
******
ことの発端は、11月の末に出た論文にまつわる、この件だ。アウストラロピテクスの仲間、アウストラロピテクス・デイレメダの足の骨が特定され、ルーシーの属するアウストラロピテクス・アファレンシスより原始的な特徴を多く含みそうだ、という話になった。
※ちなみに、古い人類の化石は全身骨格で出てくることはほぼ無く、頭蓋骨の一部とか、足や手の骨だけといった「パーツ」での発見になる。そのため発見時点では全身像が分からないのが普通。パーツを特定してパズルしていくことではじめて全身像が分かって議論の俎上に乗る。
エチオピアで発見された「謎の足」、アウストラロピテクス・デイレメダのものと結論付けられる。人類の祖先はどう進化した?
https://55096962.seesaa.net/article/519249185.html
この時、最後に書いた「かつては「ルーシー」とアウストラロピテクス・アファレンシスこそがホモ・サピエンスから遡った直接の祖先ではないかと考えられていたのだが、実際にはアウストラロピテクスにも色々いて、どの種が直接の祖先なのか、そもそも祖先種は一つだけなのかが分からなくなってきている」という内容。
ここが議論の発端である。
かつてNHKスペシャルで人類進化の番組が組まれた時には、アウストラロピテクス・アファレンシスが人類の祖先であり猿とのミッシング・リンクだと紹介されていたはずだ。その代表例として「ルーシー」も紹介され、さらにミトコンドリア・イブの話も出て、まるでルーシーがイブであるかのような扱いを受けていたのではなかったかと思う。(広まった誤解はその後、今に至るまで解消されていない…)
つまり「ルーシーが祖先」というイメージを刷り込まれている世代にとって、ルーシーと同時代の他の亜種が見つかったからといって、いまさら鞍替えは出来ないという意識が働いていたと思う。少なくとも、今回の論文に異論を唱えている研究者の一部の行動動機はそこだろう。
ただ、異論を唱えるにしても根拠は必要だ。そもそも、かつてアウストラロピテクス・アファレンシスはどのようにして人類の祖先と特定されたのか。
実はここが微妙で、当時は、「ルーシー」に匹敵する古い骨、かつ現生人類に繋がりそうな形質を盛っている種が他に見つかっていなかった。
なので選択の余地が無かったとも言える。
現在までの間に新しい発見があって選択肢が増えたのなら、可能性が揺らぐのは当然だ。実際、いまそうなっているのだから…。
なのでこれは、本来は「定説」として扱われてはいけなかったのではないか。
また、アウストラロピテクスの中の亜種をいたずらに増やしても、そもそも、それらの種が本当に別のものだったのかどうかも分からない。
種族名をつけて分類してるのは現代の学者であって、彼らが生きていた当時にそんな区分は無かったのは間違いない。互いに交雑可能なくらいの近さだったのなら混血/交雑が普通に出来てたかもしれないので、「どれが祖先なのか」とかの議論自体が無意味で、ぜんぶ入りしたのが現生人類の祖先、という可能性すらある。
人類の祖先探しは新しい発見があるたび年々複雑化していっており、いったんリセットしたらどうか、とか、進化系統樹をいたずらに複雑化させるのはやめよう、という意見も定期的に見かける。
あまり違いのないものに名前だけ増やするはもうやめようぜ、みたいな話もあっりする。(ただし、それだと「デニソワ人」のような定着した名前も消える。デニソワ人はネアンデルタール人の亜種扱いされることが多い)
おそらく、この分野はいま、研究の方向性の岐路に立たされているのだろう。外野としては眺めるだけだが、少なくとも、進化論を認めてない連中とかの茶々くらいは跳ね除けてもらいたいところ。
それと、ストーリーありきの研究はこの先もう出来ない/してはならないと思うし、イデオロギーありきの結論を出さないよう気をつけないとおかしな方向に議論が流れてしまいそうだ。
人類の祖先種が何なのか、について、専門家・専門外の人入り乱れてなぜか謎の議論沸騰になっている。
以下のサイトでもコメント欄がなんか盛り上がってて、わけわからんことになっているのが見て取れる。
Scientists claim 'Lucy' may not be our direct ancestor after all, stoking fierce debate
https://www.livescience.com/archaeology/human-evolution/scientists-claim-lucy-may-not-be-our-direct-ancestor-after-all-stoking-fierce-debate#viafoura-comments
・人類の祖先種が以前は定説だったアウストラロピテクス・アファレンシスではなくアウストラロピテクス・デイレメダだという論文が出て、賛成/反対入り乱れての議論になっている
・そもそもアウストラロピテクス・アファレンシスを人類の祖先種としたことに確証はなかったことが明らかになりつつある(と自分には見えた)
・人類の進化の研究は、いままでロマンやストーリーありきで進め過ぎていなかったか? という問題提起
・そこに「そもそも人類が猿のようなものから進化したとは信じがたい」という福音派や、「アフリカの人類は猿から発達したにしても我々は違うのではないか」といって100年前からのタイムスリッパー優生種思想者が乱入
…という感じ。
うん、なんか楽しいな。ていうかアメリカなんかだと未だに地球は平らだと信じてる人もいるくらいだし、まあ英語圏の議論がカオスになるのはよくあるやつ。
ただ、ここで出てきた問題の幾つかは、認識しておいたほうが良さそうな内容だと思う。
******
ことの発端は、11月の末に出た論文にまつわる、この件だ。アウストラロピテクスの仲間、アウストラロピテクス・デイレメダの足の骨が特定され、ルーシーの属するアウストラロピテクス・アファレンシスより原始的な特徴を多く含みそうだ、という話になった。
※ちなみに、古い人類の化石は全身骨格で出てくることはほぼ無く、頭蓋骨の一部とか、足や手の骨だけといった「パーツ」での発見になる。そのため発見時点では全身像が分からないのが普通。パーツを特定してパズルしていくことではじめて全身像が分かって議論の俎上に乗る。
エチオピアで発見された「謎の足」、アウストラロピテクス・デイレメダのものと結論付けられる。人類の祖先はどう進化した?
https://55096962.seesaa.net/article/519249185.html
この時、最後に書いた「かつては「ルーシー」とアウストラロピテクス・アファレンシスこそがホモ・サピエンスから遡った直接の祖先ではないかと考えられていたのだが、実際にはアウストラロピテクスにも色々いて、どの種が直接の祖先なのか、そもそも祖先種は一つだけなのかが分からなくなってきている」という内容。
ここが議論の発端である。
かつてNHKスペシャルで人類進化の番組が組まれた時には、アウストラロピテクス・アファレンシスが人類の祖先であり猿とのミッシング・リンクだと紹介されていたはずだ。その代表例として「ルーシー」も紹介され、さらにミトコンドリア・イブの話も出て、まるでルーシーがイブであるかのような扱いを受けていたのではなかったかと思う。(広まった誤解はその後、今に至るまで解消されていない…)
つまり「ルーシーが祖先」というイメージを刷り込まれている世代にとって、ルーシーと同時代の他の亜種が見つかったからといって、いまさら鞍替えは出来ないという意識が働いていたと思う。少なくとも、今回の論文に異論を唱えている研究者の一部の行動動機はそこだろう。
ただ、異論を唱えるにしても根拠は必要だ。そもそも、かつてアウストラロピテクス・アファレンシスはどのようにして人類の祖先と特定されたのか。
実はここが微妙で、当時は、「ルーシー」に匹敵する古い骨、かつ現生人類に繋がりそうな形質を盛っている種が他に見つかっていなかった。
なので選択の余地が無かったとも言える。
現在までの間に新しい発見があって選択肢が増えたのなら、可能性が揺らぐのは当然だ。実際、いまそうなっているのだから…。
なのでこれは、本来は「定説」として扱われてはいけなかったのではないか。
また、アウストラロピテクスの中の亜種をいたずらに増やしても、そもそも、それらの種が本当に別のものだったのかどうかも分からない。
種族名をつけて分類してるのは現代の学者であって、彼らが生きていた当時にそんな区分は無かったのは間違いない。互いに交雑可能なくらいの近さだったのなら混血/交雑が普通に出来てたかもしれないので、「どれが祖先なのか」とかの議論自体が無意味で、ぜんぶ入りしたのが現生人類の祖先、という可能性すらある。
人類の祖先探しは新しい発見があるたび年々複雑化していっており、いったんリセットしたらどうか、とか、進化系統樹をいたずらに複雑化させるのはやめよう、という意見も定期的に見かける。
あまり違いのないものに名前だけ増やするはもうやめようぜ、みたいな話もあっりする。(ただし、それだと「デニソワ人」のような定着した名前も消える。デニソワ人はネアンデルタール人の亜種扱いされることが多い)
おそらく、この分野はいま、研究の方向性の岐路に立たされているのだろう。外野としては眺めるだけだが、少なくとも、進化論を認めてない連中とかの茶々くらいは跳ね除けてもらいたいところ。
それと、ストーリーありきの研究はこの先もう出来ない/してはならないと思うし、イデオロギーありきの結論を出さないよう気をつけないとおかしな方向に議論が流れてしまいそうだ。