そういや出してなかった、ってことで 2025年 考古学10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)

2025年版をまだ出していなかったのを思い出したので、後追いでやっておくことにした。
が、今年はなんかちょっと…編集者変わったのか方針が変わったのか、いつにも増して微妙な感じのチョイスに。

Top 10 Discoveries of 2025
https://archaeology.org/collection/top-10-discoveries-of-2025/
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●Tales from the Neolithic
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/tales-from-the-neolithic/top-10-discoveries-of-2025/

トルコのカラハン・テペ遺跡のT字型の柱に人物の顔が掘られているものが見つかった、という発見。
この遺跡は約1万年前の、先土器新石器時代のもので、日本で言うと縄文時代の初めくらいの頃。その時代なので当時の信仰や思想はよく分かっていないのだが、この発見から、遺跡に立ってる柱が人間を表現したものと裏付けられることになった。

石の柱に顔を刻むのは中央アジアの遺跡でよく知られる。時代は全然違うが、発想的に何かつながるものがあるのかもしれない。


●Return of the King
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/return-of-the-king/top-10-discoveries-of-2025/

マヤ遺跡カラコルで、初代の王テ・カブ・チャアク(Te K’ab Chaak)王の墓が発見されたもの。
この王が統治したのは西暦で400年頃とされる。発見まで40年かかったらしい。墓の発見だけでは、特に歴史が書き換わるとか、カラコル成立についての情報が得られるとかは無いので、今後の研究待ちかなと思う。


●The First Indo-European Speakers
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/the-first-indo-european-speakers/top-10-discoveries-of-2025/

長年論争が続いている、インド・ヨーロッパ語族の話者はどこからやってきたのか? という話。
古くはヒッタイト語がこの語族に属し、現在ではインドからヨーロッパまで広く話されている多くの言語の源流。
このブログを書いてる人が言語学にあまり興味がなくスルーしてしまっているのだが、何年か前に黒海北部が起源チではないかという論文が出ていて、ヤムナヤ族はインド・ヨーロッパ祖語の一種を話していたのではとされていた。それを裏付けるため、ウクライナ東部とロシア南部の400人以上の古代人を対象とした新たなDNA研究をやってみた、という研究。

つまりインド・ヨーロッパ語族の源流となる言語を話していただろう古代人をDNAから特定出来ないか、という研究だ。自分的には、「言語」と「遺伝的に統一された人間集団」は必ずしも一致しないと考えているので、この研究事態が推測に推測を重ねているようでちょっと危ういなと思う。


●Crete's Inner Circles
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/cretes-inner-circles/top-10-discoveries-of-2025/

クレタ島中央部にあるミノア文明の円形建造物(Hill Circular Structure)についての調査。
この建造物は、パポウラ山(Papoura Mountain)の山頂にある。紀元前3,000年~紀元前1,800年頃まで使われたとされ、フェスティバルホールのような使われ方をしていたのでは、と考えられている。もしかしたら用途は時代ごとに少しずつ変わっていったかもしれないらしいが、他のミノア文明の建造物との関連が見えなくて謎扱いされている。
特に新発見があるわけでもないので、なんでTOP 10 DISCOVERIESに取り上げられているのかは謎。

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●Oldest Mummified People
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/oldest-mummified-people/top-10-discoveries-of-2025/

ベトナムの洞窟でみつかった屈葬ミイラの骨を調べてみたところ低温加熱されていることがわかり、煙でいぶしてミイラにされた可能性が出てきた、という話。最古の遺体が1万年前のものだったのOldestとつけているようだが、やや安直すぎるタイトルだと思う…。
習慣として長期に渡って遺体の燻製ミイラが作られていたと言えるだけの根拠が揃っていないように見える調査なので、これを「世界最古のミイラ」と呼ぶのは微妙な感じがする。

ていうか遺体を台所の土間の下などに埋める風習は他の地域でもあるんだけど、たまたま竈の近くに埋めてたから低温加熱されちゃった可能性とかは無いんだろうか…?
そうした要因を否定できるだけの根拠も薄いので、これをそのまま受け入れるのは抵抗感がある。


●Dining With Dionysus
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/dining-with-dionysus/top-10-discoveries-of-2025/

ポンペイ遺跡で、ずっと見逃されてきた状態のいいダイニング・ルームが公開されたらしい。写真見ないとわかんないと思うが、見るとまあきれい。人間をほぼ等身大に描いた珍しいものだそうで、食堂にふさわしく、ディオニュソス神と従者や踊り子たちの図になっているらしい。

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●The Case of the Missing Pharaoh
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/the-case-of-the-missing-pharaoh/top-10-discoveries-of-2025/

第18王朝、ハトシェプスト女王のダンナのトトメス2世の失われていた墓の再発見。
これは、このブログでも詳しく取り上げた。

トトメス2世の墓、新たに発見される。(ミイラはもっと前から発見されている) 今までの候補墓、全部ちゃうかったんかい!
https://55096962.seesaa.net/article/510517626.html


●Hymn to Babylon
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/hymn-to-babylon/top-10-discoveries-of-2025/

未解読だった膨大な粘土板の中から、古代メソポタミアの都市バビロンについての讃歌が新たに解読されたというもの。

AIで楔形文字解読、バビロニアの「ユーフラテス川讃歌」が見つかる
https://55096962.seesaa.net/article/516688886.html


●The Winds of Change
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/the-winds-of-change/top-10-discoveries-of-2025/

ペルーのパンパ・ラ・クルス遺跡から、年配の高貴な男性二人の埋葬が発見されたというもの。
ワリ文化とモチェ文化の様式が混じっているというのが面白そう。ペルー北部の海岸沿い地域の社会構造について新たな一面を明らかにする発見。


●A Feminine Touch
https://archaeology.org/issues/january-february-2026/collection/a-feminine-touch/top-10-discoveries-of-2025/

トルコのチャタル・ホユックは女系社会だっただろう、とする研究。
これは詳しく取り上げて「この証拠だけから女系とか言うの無理じゃない?」とツッコんだ。

この結論出せた理由が良くわからない…「チャタルホユックは女性中心の社会だった!」という論文について
https://55096962.seesaa.net/article/516658725.html




というわけで、今回のTOP10は半分くらい「うーん…これそもそも発見では無くない…?」みたいなのが混じってて、個人的にはあまり腑に落ちないチョイスでした。ていうかツッコミ入れたか、ツッコミ入れるのが面倒くさくてスルーしたやつが選出されているのは納得いかない。あと、今までだと同じ地域から2つの選出はやってなかったはずなのに、今回トルコ先史時代で2つ被ってるのも謎。
もっと他に選ぶやつあるんじゃないのかな…。


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参考までに、2024年までの履歴

毎年恒例の。今年の考古学10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/507181299.html

またこの季節がやってきた。今年の考古学10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/501728756.html

2022年、考古学の10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/494571344.html

今年も考古学発見物のTOP10が発表されていたので見てきた。
https://55096962.seesaa.net/article/202112article_21.html

2020年、考古学の10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/202012article_9.html

2019年、考古学の10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/201912article_24.html

今年の考古学10大発見物
https://55096962.seesaa.net/article/201712article_22.html

今年もArchaeology Magazineの「10大発見」。今年は全般的に地味かな…
https://55096962.seesaa.net/article/201612article_27.html