内容が偏っているからこそチョイスの項目が面白い「メソポタミア文明入門」
移動の時間つぶしに、なんでもいいから適当に読むべ。と適当にポチって読み始めた本。
タイトルと著者名からして無難な内容だろうとは思っていたが、まあ無難。というか他の本で読んだことある内容をコンパクトにまとめたもので、初心者向けならいいだろうが、もう少しディープな内容が読みたい人には物足りないだろうなあという感じではあった。

メソポタミア文明入門 (岩波ジュニア新書) - 中田 一郎
ただ、この本、最初に書かれているとおり網羅性はなく、総括でもない。主要な話題のいくつかを取り上げ、「どれか一章でも興味を持ってもらえたらそれでいい」というスタンスである。
逆に言えば、著者が「メソポタミア文明」について全く知らない人にこの文明を売り込む時に、何を売り込みたいのか、何が面白いと思っているのか、という観点で切り出された幾つかのパーツが詰まっている本なわけで、そのパーツを並べてみると面白いことがわかる。
章は全部で8つ。内容は以下。
第1章 古代メソポタミア――その風土と歴史
第2章 シュメール都市文明の成立
第3章 文字と文書
第4章 書記の学校
第5章 正義と法
第6章 ハンムラビ法典を通してみたバビロニア社会
第7章 結婚・遺産相続・養子縁組
第8章 神話と物語
第1章は無難に、「メソポタミアとはどこにあるのか、どの範囲なのか」であり、第2章はその範囲の中にある主要な都市、考古学的な遺跡の話と歴史の概要を駆け足に説明している。
第3章から6章までは、ほぼ連続している。「文字」「文書記録」に関する内容だ。ここを細かく分けた理由はよく分からないが、著者の得意ジャンルなので多めに章を使った、とかかもしれない。
第7章は文書記録から分かる生活・風俗。
第8章も文書記録に因っているが、この部分だけでも一冊の本になる「神話・伝説」。
第3章と第4章はひとつの章にまとめてもいい内容だったし、第5章と第6章を分けるほどハンムラビ法典について多く語ってるのは初心者が名前だけ知ってるものだからなのか? とか、やや偏りがある。生活、風俗に関する章が少ないのと、メソポタミアを取り巻く周辺国との関係性が薄い気がしたのと、時代ごとに変わる部分(主要言語とか民族とか)への言及があまり無かったなあという感じだが、総括的な内容ではなく著者の好みか得意ジャンルかによるチョイスなのだろう。
こうしてみると、メソポタミアの研究がいかに「文字」「文書記録」に頼っているかがよく分かる。粘土板に記された楔形文字による文書、これが無ければ何も始まらないのだ。
メソポタミアはエジプトのように遺跡や遺物が残っているわけではないジャンルだ。
以前、メソポタミアとエジプトの船の遺物の残り具合が全然違うという話を書いたことがあるが、このくらい違う。
なので遺跡とか遺物とかで話ふくらませることは難しいし、人の遺体とか墓とかもほとんど残っていないのでエジプトのようにミイラの話をすることも出来ない。してみると、メソポタミア文明で初心者にとっつきやすい部分を切り出そうとすると、文字記録から取り出した情報を組み合わせたものを使う以外の手段があまり無い…という事情がうっすら見えてくる。
もしも、同じように古代エジプト文明で全8章入門書を作るとしたら、自分ならこんな感じかな…。
そもそもメソポタミアと違ってエジプトは、エジプト人という混成民族のままずっと変わらず、言語も多少変化するものの系統的にはずっと同じ、国土の範囲はほぼ変更なしで王朝のカウントだけ増えていく感じなので、メソポタミア文明とはだいぶ条件が違っていて書きやすい。そして、文字で書かれたもの以外に利用できる物理的な考古学資料が沢山ある。ピラミッドのような目立つ遺跡もある。
1章 風土と歴史(メソポタミア入門と同じ)
2章 有名なファラオとそれぞれの生きた時代の概要
3章 異国人の流入、異国人による支配、エジプト人とは何者かなどの話
4章 ピラミッドと古王国時代
5章 ミイラや死者の書など埋葬習慣
6章 王族・貴族の暮らし
7章 民衆の暮らし
8章 神話と伝承
そういえば、エジプトには民衆自身が書いた資料がたくさんあるが、メソポタミアで民衆の暮らしを再現しようとしたら利用できる資料が少なくて苦労すると思う。
同じ「早くから文字を使っていた文明」でも、ウリに出来る部分が全然違うんだなあ…と気づけたのが、この本を読んで得た最大の成果かもしれない。
タイトルと著者名からして無難な内容だろうとは思っていたが、まあ無難。というか他の本で読んだことある内容をコンパクトにまとめたもので、初心者向けならいいだろうが、もう少しディープな内容が読みたい人には物足りないだろうなあという感じではあった。

メソポタミア文明入門 (岩波ジュニア新書) - 中田 一郎
ただ、この本、最初に書かれているとおり網羅性はなく、総括でもない。主要な話題のいくつかを取り上げ、「どれか一章でも興味を持ってもらえたらそれでいい」というスタンスである。
逆に言えば、著者が「メソポタミア文明」について全く知らない人にこの文明を売り込む時に、何を売り込みたいのか、何が面白いと思っているのか、という観点で切り出された幾つかのパーツが詰まっている本なわけで、そのパーツを並べてみると面白いことがわかる。
章は全部で8つ。内容は以下。
第1章 古代メソポタミア――その風土と歴史
第2章 シュメール都市文明の成立
第3章 文字と文書
第4章 書記の学校
第5章 正義と法
第6章 ハンムラビ法典を通してみたバビロニア社会
第7章 結婚・遺産相続・養子縁組
第8章 神話と物語
第1章は無難に、「メソポタミアとはどこにあるのか、どの範囲なのか」であり、第2章はその範囲の中にある主要な都市、考古学的な遺跡の話と歴史の概要を駆け足に説明している。
第3章から6章までは、ほぼ連続している。「文字」「文書記録」に関する内容だ。ここを細かく分けた理由はよく分からないが、著者の得意ジャンルなので多めに章を使った、とかかもしれない。
第7章は文書記録から分かる生活・風俗。
第8章も文書記録に因っているが、この部分だけでも一冊の本になる「神話・伝説」。
第3章と第4章はひとつの章にまとめてもいい内容だったし、第5章と第6章を分けるほどハンムラビ法典について多く語ってるのは初心者が名前だけ知ってるものだからなのか? とか、やや偏りがある。生活、風俗に関する章が少ないのと、メソポタミアを取り巻く周辺国との関係性が薄い気がしたのと、時代ごとに変わる部分(主要言語とか民族とか)への言及があまり無かったなあという感じだが、総括的な内容ではなく著者の好みか得意ジャンルかによるチョイスなのだろう。
こうしてみると、メソポタミアの研究がいかに「文字」「文書記録」に頼っているかがよく分かる。粘土板に記された楔形文字による文書、これが無ければ何も始まらないのだ。
メソポタミアはエジプトのように遺跡や遺物が残っているわけではないジャンルだ。
以前、メソポタミアとエジプトの船の遺物の残り具合が全然違うという話を書いたことがあるが、このくらい違う。
なので遺跡とか遺物とかで話ふくらませることは難しいし、人の遺体とか墓とかもほとんど残っていないのでエジプトのようにミイラの話をすることも出来ない。してみると、メソポタミア文明で初心者にとっつきやすい部分を切り出そうとすると、文字記録から取り出した情報を組み合わせたものを使う以外の手段があまり無い…という事情がうっすら見えてくる。
もしも、同じように古代エジプト文明で全8章入門書を作るとしたら、自分ならこんな感じかな…。
そもそもメソポタミアと違ってエジプトは、エジプト人という混成民族のままずっと変わらず、言語も多少変化するものの系統的にはずっと同じ、国土の範囲はほぼ変更なしで王朝のカウントだけ増えていく感じなので、メソポタミア文明とはだいぶ条件が違っていて書きやすい。そして、文字で書かれたもの以外に利用できる物理的な考古学資料が沢山ある。ピラミッドのような目立つ遺跡もある。
1章 風土と歴史(メソポタミア入門と同じ)
2章 有名なファラオとそれぞれの生きた時代の概要
3章 異国人の流入、異国人による支配、エジプト人とは何者かなどの話
4章 ピラミッドと古王国時代
5章 ミイラや死者の書など埋葬習慣
6章 王族・貴族の暮らし
7章 民衆の暮らし
8章 神話と伝承
そういえば、エジプトには民衆自身が書いた資料がたくさんあるが、メソポタミアで民衆の暮らしを再現しようとしたら利用できる資料が少なくて苦労すると思う。
同じ「早くから文字を使っていた文明」でも、ウリに出来る部分が全然違うんだなあ…と気づけたのが、この本を読んで得た最大の成果かもしれない。