中国の緑化運動の「過去に失政で砂漠化したとこ修復する」という側面と、日本からの植林ボランティアについて
少し前に、「中国の緑化運動がなぜか急にSNSとかで持て囃されてるけど、そもそも砂漠の緑化って環境破壊になるよ…」という話をした。
もともと降水量の少ないところに植物を増やすためには、地下水や近くの川から引き込んだ水を大量に(人為的に)消費することになり水資源の無駄遣いになったり、数種類の乾燥に強いものだけを集中的に植えることによって生態系が余計に壊れてしまったりするのだ。
これについてもう少し詳しく調べてみたところが、さらに面白いことがわかった。
そもそも中国さんは過去の失政で砂漠(負の遺産、使えない土地)を拡大させてしまった経緯がある。そもそも、その自分たちで壊してしまった環境を「修復」することを「緑化」と呼んでいるのだ。
つまりマイナスをゼロに戻したいという話が大元にある。環境がプラスに転じたようにポジティブに宣伝しているのは、なんとも…うん…まあプロパガンダとしては上手いんだろうけど、過去の環境破壊に無理な緑化という新たな環境破壊を重ねている部分を上手く誤魔化したもんだなあ、というか…。
●緑化したい土地の多くは「過去の失政で砂漠化した」
中国は3,000年前には国土の半分以上が緑だったのが、その後の無秩序な開発で土地を荒廃させ、建国時には10%以下(最小だと5.2%くらい)まで下がっていたらしい。
遊牧民をむりやり定住させて畑に向かないところを開墾させたことで土地が荒れてしまった、大躍進の時代にスズメを刈りつくして蝗害が発生、飢饉で農民が離散して耕作地が荒地になった、毛皮のためにキツネを狩りつくしたらウサギとネズミが増えて草原が草原でなくなった、など、なんともダイナミックで国家規模の環境破壊が近代まで続いていた。
今話題のレアアースの採掘もそうだが、鉱物資源の採取の際にコストを低く抑えるため環境影響を無視して露天掘りした結果、周辺環境を汚染して植生を全滅させていたりする。
荒廃した土地は当然、何にも使えない。これを産業に使える土地に「復元」しようというのが緑化運動の主軸となる。
ダイナミックにぶっ壊した環境を、また力業で戻そうというのだから、誇るようなことでもない気がするのだが…。実際には、この「復元」運動は一般や企業から募金をつのり、国からも援助をし、さらには日本からもボランティアを呼んで宣伝するなど、一種のエコツアーみたいな産業になって金を回すものになっていたようだ。

●修復できる土地と、そうでない土地はもちろんある
ただし、過去に植生があったから土地が荒れただけだからといって、すべての土地をもう一度緑化できるわけではない。
たとえば、ブリテン島はかつて森の多い島だったとされるが、現在は大きな森は全然ない。もともと氷河期に表土を削られて薄い土しかなかったところ、羊の放牧で植生が荒れ、土壌が流出してしまったため森林の復元が困難なのだ。
アイスランドも同様で、寒冷地なので植物の生長が遅い土地なのに、ヴァイキングが移住して木を使いつくしてしまったため北部の一部に残る木以外は消えてしまった。
有名どころのイースター島も、ユーカリなどを人為的に植えて緑化に励んでいるが、いちど木が消えて土壌が流出してしまったところでは植生の復活は簡単ではなく元のヤシ林は全く戻ってきていない。
中国の緑化地域のうち、緑化の成功事例として宣伝されるエンガベイという土地は近代に荒地になってしまったところで、植生を維持できるだけの土地ポテンシャルが残っていたので環境の復元が容易だったらしい。
それほど寒冷ではない、雨量がそこそこある、土壌が流出しきっていない、などの条件が無いと、環境の復元は難しいだろうなと思う。
●コスト高すぎていずれ限界を迎えるだろう土地も多い
やはり、というか、既に限界を迎えつつある緑化地域もあるようだ。スプリンクラーで散水しないと木が育たないような土地に無理やり木を植えているところは、中国経済が傾くと真っ先に破綻する。というか散水のためにふもとの川の水を大量に消費しているようなので、川の水が減るとか水資源が枯渇するとかしても終わるだろう。
しかもスプリンクラー散水してまで維持している緑というのが、観光地に近く人目につくところだというのがまた何とも言えない。山に緑のペイントをしていた頃よりはマシだろうが…。
また、植物は生きていくのに水を必要とし、生きている限り葉から水を蒸散させる。無理に緑化したせいで植物が地域の限りある水資源を消費してしまい、乾燥化がより進むという結果になっている土地もあるらしい。「緑化しすぎることは環境破壊につながる」という、当たり前の結果でもある。
●日本からの植林ボランティアについて
そして調べていて驚いたのは、日本から民間団体が緑化支援をやってたということだ。といっても、希望者をボランティアで募って中国いって数日間だけ植林に参加してくるといった、「やった気持ちと実績が大事」みたいな活動でしかない。JICAのように植林後の技術支援をやっていたわけでもなさそうだし、なんだこれ…? という感じ。
かつて中国が発展途上国を名乗り、日本が戦争の賠償金がてらにODAを渡していた時代の産物だろうか。そのわりにコロナ禍前の2019年まで植林ボランティア活動記録があったりして謎。
SNSでやたら中国の緑化を持ち上げていたのは、もしかしたらそれの関係者だったのだろうか。植えるだけ植えてあとは枯れて薪に使われるだけ、という風刺は中国でもすでにあったようだが、その植えた木が定着しているのかどうか経過観察はしなかったのだろうか…。
●中国はエコのために緑化しているというよりは「負の遺産をなんとかして減らしたい」に近い
というわけで、最初に書いたとおり、中国の緑化運動は、環境を破壊しつくてにっちもさっちもいかなくなったので始めたもの、かつ緑化という聞こえのいいお題目を掲げて金を回すための「緑化産業」とでもいうものに思えた。
マンション建てては住みもせずに壊していた建設業と大差ないなという印象だ。GDPには貢献するだろうが、何かを生み出しているわけではなく、やり方のまずいところはかえって環境を余計に破壊して致命傷を与えている。
品種改良で乾燥に強い植物を作り出して植えればいい! という研究もやってるらしいが、植物を植える=水分の蒸発量が増える=土壌の乾燥化が進む、という悪循環は必然なので、前提となる考え方からして適切ではない。
雨が降らない土地に雨を継続的に降らせることは出来ない。表土が流出したところに土壌を出現させることは出来ない。人の力だけで砂漠にほんの数十年で森を出現させることは、誰にもできない。(地球が雨を降らせる頻度を変えればできるかもしれないが…)
前の記事にも書いたとおり、無茶で無理を通そうとせず、沙漠の中でも比較的雨の多い地域などにターゲット絞って、長い時間かけて土壌を育てるくらいの気持ちでやらないと意味ないと思いますね…。
*******
良くまとまっていた本が以下。
出たのが2019年のようなので、おそらく今はもう少し事情が変わって(悪化して)いるだろうなと思う。スプリンクラーで維持しているような金のかかる林は、今の中国さんの経済でいったいいつまで持たせられるんだろうか。

砂漠考: 中国の荒れ地とその緑化修復から - 徳岡 正三
もともと降水量の少ないところに植物を増やすためには、地下水や近くの川から引き込んだ水を大量に(人為的に)消費することになり水資源の無駄遣いになったり、数種類の乾燥に強いものだけを集中的に植えることによって生態系が余計に壊れてしまったりするのだ。
これについてもう少し詳しく調べてみたところが、さらに面白いことがわかった。
そもそも中国さんは過去の失政で砂漠(負の遺産、使えない土地)を拡大させてしまった経緯がある。そもそも、その自分たちで壊してしまった環境を「修復」することを「緑化」と呼んでいるのだ。
つまりマイナスをゼロに戻したいという話が大元にある。環境がプラスに転じたようにポジティブに宣伝しているのは、なんとも…うん…まあプロパガンダとしては上手いんだろうけど、過去の環境破壊に無理な緑化という新たな環境破壊を重ねている部分を上手く誤魔化したもんだなあ、というか…。
●緑化したい土地の多くは「過去の失政で砂漠化した」
中国は3,000年前には国土の半分以上が緑だったのが、その後の無秩序な開発で土地を荒廃させ、建国時には10%以下(最小だと5.2%くらい)まで下がっていたらしい。
遊牧民をむりやり定住させて畑に向かないところを開墾させたことで土地が荒れてしまった、大躍進の時代にスズメを刈りつくして蝗害が発生、飢饉で農民が離散して耕作地が荒地になった、毛皮のためにキツネを狩りつくしたらウサギとネズミが増えて草原が草原でなくなった、など、なんともダイナミックで国家規模の環境破壊が近代まで続いていた。
今話題のレアアースの採掘もそうだが、鉱物資源の採取の際にコストを低く抑えるため環境影響を無視して露天掘りした結果、周辺環境を汚染して植生を全滅させていたりする。
荒廃した土地は当然、何にも使えない。これを産業に使える土地に「復元」しようというのが緑化運動の主軸となる。
ダイナミックにぶっ壊した環境を、また力業で戻そうというのだから、誇るようなことでもない気がするのだが…。実際には、この「復元」運動は一般や企業から募金をつのり、国からも援助をし、さらには日本からもボランティアを呼んで宣伝するなど、一種のエコツアーみたいな産業になって金を回すものになっていたようだ。
●修復できる土地と、そうでない土地はもちろんある
ただし、過去に植生があったから土地が荒れただけだからといって、すべての土地をもう一度緑化できるわけではない。
たとえば、ブリテン島はかつて森の多い島だったとされるが、現在は大きな森は全然ない。もともと氷河期に表土を削られて薄い土しかなかったところ、羊の放牧で植生が荒れ、土壌が流出してしまったため森林の復元が困難なのだ。
アイスランドも同様で、寒冷地なので植物の生長が遅い土地なのに、ヴァイキングが移住して木を使いつくしてしまったため北部の一部に残る木以外は消えてしまった。
有名どころのイースター島も、ユーカリなどを人為的に植えて緑化に励んでいるが、いちど木が消えて土壌が流出してしまったところでは植生の復活は簡単ではなく元のヤシ林は全く戻ってきていない。
中国の緑化地域のうち、緑化の成功事例として宣伝されるエンガベイという土地は近代に荒地になってしまったところで、植生を維持できるだけの土地ポテンシャルが残っていたので環境の復元が容易だったらしい。
それほど寒冷ではない、雨量がそこそこある、土壌が流出しきっていない、などの条件が無いと、環境の復元は難しいだろうなと思う。
●コスト高すぎていずれ限界を迎えるだろう土地も多い
やはり、というか、既に限界を迎えつつある緑化地域もあるようだ。スプリンクラーで散水しないと木が育たないような土地に無理やり木を植えているところは、中国経済が傾くと真っ先に破綻する。というか散水のためにふもとの川の水を大量に消費しているようなので、川の水が減るとか水資源が枯渇するとかしても終わるだろう。
しかもスプリンクラー散水してまで維持している緑というのが、観光地に近く人目につくところだというのがまた何とも言えない。山に緑のペイントをしていた頃よりはマシだろうが…。
また、植物は生きていくのに水を必要とし、生きている限り葉から水を蒸散させる。無理に緑化したせいで植物が地域の限りある水資源を消費してしまい、乾燥化がより進むという結果になっている土地もあるらしい。「緑化しすぎることは環境破壊につながる」という、当たり前の結果でもある。
●日本からの植林ボランティアについて
そして調べていて驚いたのは、日本から民間団体が緑化支援をやってたということだ。といっても、希望者をボランティアで募って中国いって数日間だけ植林に参加してくるといった、「やった気持ちと実績が大事」みたいな活動でしかない。JICAのように植林後の技術支援をやっていたわけでもなさそうだし、なんだこれ…? という感じ。
かつて中国が発展途上国を名乗り、日本が戦争の賠償金がてらにODAを渡していた時代の産物だろうか。そのわりにコロナ禍前の2019年まで植林ボランティア活動記録があったりして謎。
SNSでやたら中国の緑化を持ち上げていたのは、もしかしたらそれの関係者だったのだろうか。植えるだけ植えてあとは枯れて薪に使われるだけ、という風刺は中国でもすでにあったようだが、その植えた木が定着しているのかどうか経過観察はしなかったのだろうか…。
●中国はエコのために緑化しているというよりは「負の遺産をなんとかして減らしたい」に近い
というわけで、最初に書いたとおり、中国の緑化運動は、環境を破壊しつくてにっちもさっちもいかなくなったので始めたもの、かつ緑化という聞こえのいいお題目を掲げて金を回すための「緑化産業」とでもいうものに思えた。
マンション建てては住みもせずに壊していた建設業と大差ないなという印象だ。GDPには貢献するだろうが、何かを生み出しているわけではなく、やり方のまずいところはかえって環境を余計に破壊して致命傷を与えている。
品種改良で乾燥に強い植物を作り出して植えればいい! という研究もやってるらしいが、植物を植える=水分の蒸発量が増える=土壌の乾燥化が進む、という悪循環は必然なので、前提となる考え方からして適切ではない。
雨が降らない土地に雨を継続的に降らせることは出来ない。表土が流出したところに土壌を出現させることは出来ない。人の力だけで砂漠にほんの数十年で森を出現させることは、誰にもできない。(地球が雨を降らせる頻度を変えればできるかもしれないが…)
前の記事にも書いたとおり、無茶で無理を通そうとせず、沙漠の中でも比較的雨の多い地域などにターゲット絞って、長い時間かけて土壌を育てるくらいの気持ちでやらないと意味ないと思いますね…。
*******
良くまとまっていた本が以下。
出たのが2019年のようなので、おそらく今はもう少し事情が変わって(悪化して)いるだろうなと思う。スプリンクラーで維持しているような金のかかる林は、今の中国さんの経済でいったいいつまで持たせられるんだろうか。

砂漠考: 中国の荒れ地とその緑化修復から - 徳岡 正三