このジャンル研究者おったんかい!「スーダンの文化遺産」
スーダンの考古学は、とにかく資料が少ない。たまに発掘情報が出てたりニュースになるような発見もあるけど、エジプトに比べると比べ物にならないくらい数が少ない。面白そうな遺跡はあるのに、歴史の概要だけでも興味を惹かれるのに、不遇な地域なのである。
…と、いう嘆きをそのまんま書いてある本が出ていた。
そんな不遇な、そしていま内戦で荒廃しているだろうスーダンの歴史と貴重な遺跡について、もっと知名度を上げたいと奮戦する学者の本である。

スーダンの文化遺産――歴史・現状・復興 - 関広尚世
スーダンは、古代エジプトの時代にはエジプトの一部だったこともあり、エジプト南部とスーダン北部をあわせて地域名として「ヌビア」という名前がよく使われている。古代エジプト語ではクシュと呼ばれた地域にほぼ該当する。
なのでエジプトマニア界ではスーダンというよりヌビアと言ったほうが通じるだろうが、実際にはスーダンにはヌビアに含まれない地域があり、エジプトとは関係の薄い歴史もある。
常にエジプトの周辺として、エジプトの歴史の一部のように扱われてきたこと。エジプトに組み込まれていた時代以外は歴史の脚光を浴びることがなかったこと。
これは確かに「スーダン」という国単位で見れば問題だ。
日本が中国の一部として扱われ、あるいは中国文化とのつながりでのみ評価されたらどう感じるか、という話である。
そうではなく、スーダン単体としての通史が必要だということ、エジプトからの影響は従来言われているほど強くなかったのではないかということ。エジプトから見た周辺としての歴史ではなく、スーダンに築かれたメロエ王国などの政体を主人公とした歴史を語るべきだろうということ。
実にごもっともな意見であり、ぜひ頑張ってね!! と言いたいところだ。
いやあの…それをやってくれる人がいないからこっちも資料探しにめちゃ苦労しているわけなので…。
過去にヌビアの文化年表調べたとき、何年もかかってようやくグループわけの基準にたどり着いたくらいなので…。
https://55096962.seesaa.net/article/200808article_17.html
本に載ってた↓この年表、10年前に欲しかった…。こういうのが無くて手探りで自分で作ってたんだよ…。

というか以下の過去記事にも書いたけど、エジプトがローマ属国になったあとヌビアに作られたキリスト教三王国は、日本語で概要からまとまってるような資料がマジでなくて、どうしてくれようかと思ったくらいだから…。
ヌビアXグループ、バラナ(バッラーナ)文化とその遺物についての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/501508980.html
ヌビア(メロエ)とインドの繋がり:かつて見えなかった伝播経路が見えてきた
https://55096962.seesaa.net/article/503833109.html
なお、スーダンだけでなく、エジプト国内でも、アスワンなど「ヌビア」地方の遺跡・遺物は辺境の品扱いであまり重要視されていない。
これは古くは鈴木八司が書いたように、エジプトいえばファラオの黄金やピラミッドばかりが取り沙汰されて、地味な神殿やファラオの威光から遠い遺跡がないがしろにされてきたからだと思う。
アスワン・ハイ・ダムに水没する遺跡の救済プロジェクトで「なんで日本が出資しなきゃならんのか」と言った学者と同じ考え方の人が今でもいるということなのだろう。(遺跡や遺物の価値を知名度で独善的に決めるような学者は、正座させて学生からやり直させたほうがいい気がするんだが…。)
”価値なきものを誰が振り返るのか” ヌビアの悲哀
https://55096962.seesaa.net/article/200805article_19.html
知名度さえ上がれば再評価はされると思うんだけど。
ただし、この本にも何度か出てくるとおり、スーダンを巡る遺跡の状況はあまりよろしくない。
2023年に勃発した内戦がまだ続いており、遺跡の保存どころか誰も見てないところで盗掘され放題の可能性すらあるからだ。
イスラエルのパレスチナ攻撃やロシアのウクライナ侵攻、中国の恫喝などで日本語のニュースに出てくることはほぼ無い。BBCなど英語ニュースですら滅多に流れてこないが、状況が好転する兆しはない。
スーダン内戦勃発、実はスーダンにもエジプトマニアの聖地があるんだが
https://55096962.seesaa.net/article/499086465.html
そのため観光にはもちろん行けないし、新たな発掘調査なども難しい。スーダン、そしてヌビアは、どこまでも不遇なジャンルなのであった。
…と、いう嘆きをそのまんま書いてある本が出ていた。
そんな不遇な、そしていま内戦で荒廃しているだろうスーダンの歴史と貴重な遺跡について、もっと知名度を上げたいと奮戦する学者の本である。

スーダンの文化遺産――歴史・現状・復興 - 関広尚世
スーダンは、古代エジプトの時代にはエジプトの一部だったこともあり、エジプト南部とスーダン北部をあわせて地域名として「ヌビア」という名前がよく使われている。古代エジプト語ではクシュと呼ばれた地域にほぼ該当する。
なのでエジプトマニア界ではスーダンというよりヌビアと言ったほうが通じるだろうが、実際にはスーダンにはヌビアに含まれない地域があり、エジプトとは関係の薄い歴史もある。
常にエジプトの周辺として、エジプトの歴史の一部のように扱われてきたこと。エジプトに組み込まれていた時代以外は歴史の脚光を浴びることがなかったこと。
これは確かに「スーダン」という国単位で見れば問題だ。
日本が中国の一部として扱われ、あるいは中国文化とのつながりでのみ評価されたらどう感じるか、という話である。
そうではなく、スーダン単体としての通史が必要だということ、エジプトからの影響は従来言われているほど強くなかったのではないかということ。エジプトから見た周辺としての歴史ではなく、スーダンに築かれたメロエ王国などの政体を主人公とした歴史を語るべきだろうということ。
実にごもっともな意見であり、ぜひ頑張ってね!! と言いたいところだ。
いやあの…それをやってくれる人がいないからこっちも資料探しにめちゃ苦労しているわけなので…。
過去にヌビアの文化年表調べたとき、何年もかかってようやくグループわけの基準にたどり着いたくらいなので…。
https://55096962.seesaa.net/article/200808article_17.html
本に載ってた↓この年表、10年前に欲しかった…。こういうのが無くて手探りで自分で作ってたんだよ…。
というか以下の過去記事にも書いたけど、エジプトがローマ属国になったあとヌビアに作られたキリスト教三王国は、日本語で概要からまとまってるような資料がマジでなくて、どうしてくれようかと思ったくらいだから…。
ヌビアXグループ、バラナ(バッラーナ)文化とその遺物についての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/501508980.html
ヌビア(メロエ)とインドの繋がり:かつて見えなかった伝播経路が見えてきた
https://55096962.seesaa.net/article/503833109.html
なお、スーダンだけでなく、エジプト国内でも、アスワンなど「ヌビア」地方の遺跡・遺物は辺境の品扱いであまり重要視されていない。
これは古くは鈴木八司が書いたように、エジプトいえばファラオの黄金やピラミッドばかりが取り沙汰されて、地味な神殿やファラオの威光から遠い遺跡がないがしろにされてきたからだと思う。
アスワン・ハイ・ダムに水没する遺跡の救済プロジェクトで「なんで日本が出資しなきゃならんのか」と言った学者と同じ考え方の人が今でもいるということなのだろう。(遺跡や遺物の価値を知名度で独善的に決めるような学者は、正座させて学生からやり直させたほうがいい気がするんだが…。)
”価値なきものを誰が振り返るのか” ヌビアの悲哀
https://55096962.seesaa.net/article/200805article_19.html
知名度さえ上がれば再評価はされると思うんだけど。
ただし、この本にも何度か出てくるとおり、スーダンを巡る遺跡の状況はあまりよろしくない。
2023年に勃発した内戦がまだ続いており、遺跡の保存どころか誰も見てないところで盗掘され放題の可能性すらあるからだ。
イスラエルのパレスチナ攻撃やロシアのウクライナ侵攻、中国の恫喝などで日本語のニュースに出てくることはほぼ無い。BBCなど英語ニュースですら滅多に流れてこないが、状況が好転する兆しはない。
スーダン内戦勃発、実はスーダンにもエジプトマニアの聖地があるんだが
https://55096962.seesaa.net/article/499086465.html
そのため観光にはもちろん行けないし、新たな発掘調査なども難しい。スーダン、そしてヌビアは、どこまでも不遇なジャンルなのであった。