オーリニャック文化は「文字」を使っていたわけではない。多分飛ばし記事が来るので先に釘を差しておこう…
オーリニャック文化はフランスを中心に4万年前ごろから広がっていた旧石器時代の文化、ネアンデルタールと絶滅前に接触していたとされるのもこのあたりの時代/文化圏になる。
このオーリニャック文化の時代に既に文字があったと分かった! という英語記事を見て、あーはいはい、また飛ばし記事ね…と思って元論文を見に行ってみたら、やつぱり内容違った。「体系的な記号を慣習として用いていた可能性」というやつだった。
何が違うのかというと、これは言語学的な基準では「文字」とは見なせない「記号」なのだ。それを、文字の祖先だったと言いたいがために、言葉を濁して表現しているのがこの論文。そして、記号に意味があった、法則性があったと証明するために、統計をこねくり回して「可能性がある」と言ってるのだ。
Humans 40,000 y ago developed a system of conventional signs
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2520385123
まあ、実物見たら「いや…これただの装飾じゃね…? 文字のはしりには見えんのだが…。」としか言えないのだが

この手の、統計こねくり回して記号を文字に変えてくる研究は実に数が多く、定期的に出てくるやつなのだ。
前回取り上げたのは↓このへん。
「記号」と「文字」の違いとは。"古代人は絵文字を使っていた?"というニュースの"?"の意味
https://55096962.seesaa.net/article/201606article_11.html
文字と記号の区別もついてないし、ちょっとコレ・・・「人類は、一体いつから文字を使い始めたのか」
https://55096962.seesaa.net/article/201611article_14.html
既に過去の記事でも書いてきたとおり、「文字とは、言語をすべて余すところなく表現できる体系だった1セットの記号の集合体」という定義だ。
なので、xという記号にバイソンという意味があり、△という記号にウシという意味があり、その記号の数で頭数を現していたとしても、それは「文字ではない」。なぜなら、記号に割り当てた意味以外のものは表現出来ないからだ。
「オスのバイソン3頭、うち1頭は既に死んでいる。メスのバイソンは昨日狩った」のような思考のすべてを表現できないと文字とは認められない。
なのでこの論文の中でも、ウルクの原楔形文字(のちに楔形文字に発展していく記号群)を事例として出しているのだ。このオーリニャック文化の記号が、のちに文字に発展し得た可能性がある、と主張しているのだ。実際には発展しなかったのだから、こんな比較は無意味だと思うのだが…。
なぜこういう研究が定期的に出てくるのかについて、うがった見方をするならば、「文字の起源地がメソポタミアとエジプトで、ヨーロッバ人の手柄ではなかった」ことに対する引け目のようなものがあるのではないかと思う。逆の見方をすれば、ヨーロッパにメソポタミアやエジプトよりも古い文字の原型があってくれたほうが嬉しいと考える人たちがいる。
西洋文明の祖だと長らく考えられてきたギリシャ文明がこの両者の後輩だったという概念が定着しはじめてまだ数十年。文明の起源地に関するコンプレックスが根底にあるんじゃなければ、毎回こんな強引なこじつけ理論通してこないと思うのだが、本当に面白いくらい定期的に出てくる。日本でいう神代文字の信奉者に似ているかもしれない。ヘタに科学的な論法の皮を被ってるだけ面倒くさいが。
もちろん、この記号にどのような意味が込められていたかを証明することは不可能である。文字の原型だったことと同様、文字の概念とは無関係を証明する手段もない。
しかし歴史としての「結果」は明らかなのだ。ヨーロッパで文字が使われるようになるのは、先史時代が終わって歴史の領域に入ってからだ。
(ヴィンチャ文字は文字と認めないのが一般的)
なお、文字っぽく見えるが実際には文字ではない、というものとして、たとえば中央アジアで使われていた「タムガ」がある。
自分は、インダス文字も実際には文字ではなくこれと同じカテゴリの記号ではないかと思っている。
中央アジアで生まれた記号「タムガ」についての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/202103article_7.html
文字というのは必要がなければ生まれないもので、メソポタミアでもエジプトでも、「所有財産」という概念から誕生している。
エジプトでは人口調査と家畜頭数調査がきっかけで帳簿をつけるために文字が発展していった経緯がある。文字と、それ生み出すための必然性はセットにして考えるべきだろう。
古代エジプトの数字表記は人口調査のために導入されたものだった、という件。
https://55096962.seesaa.net/article/202111article_16.html
あと、オマケとしてエチオピアにおける文字誕生について。
「文字が生まれる理由」、いつかエチオピアで見た文字と現在のゲエズ文字について
https://55096962.seesaa.net/article/500494362.html
このオーリニャック文化の時代に既に文字があったと分かった! という英語記事を見て、あーはいはい、また飛ばし記事ね…と思って元論文を見に行ってみたら、やつぱり内容違った。「体系的な記号を慣習として用いていた可能性」というやつだった。
何が違うのかというと、これは言語学的な基準では「文字」とは見なせない「記号」なのだ。それを、文字の祖先だったと言いたいがために、言葉を濁して表現しているのがこの論文。そして、記号に意味があった、法則性があったと証明するために、統計をこねくり回して「可能性がある」と言ってるのだ。
Humans 40,000 y ago developed a system of conventional signs
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2520385123
まあ、実物見たら「いや…これただの装飾じゃね…? 文字のはしりには見えんのだが…。」としか言えないのだが
この手の、統計こねくり回して記号を文字に変えてくる研究は実に数が多く、定期的に出てくるやつなのだ。
前回取り上げたのは↓このへん。
「記号」と「文字」の違いとは。"古代人は絵文字を使っていた?"というニュースの"?"の意味
https://55096962.seesaa.net/article/201606article_11.html
文字と記号の区別もついてないし、ちょっとコレ・・・「人類は、一体いつから文字を使い始めたのか」
https://55096962.seesaa.net/article/201611article_14.html
既に過去の記事でも書いてきたとおり、「文字とは、言語をすべて余すところなく表現できる体系だった1セットの記号の集合体」という定義だ。
なので、xという記号にバイソンという意味があり、△という記号にウシという意味があり、その記号の数で頭数を現していたとしても、それは「文字ではない」。なぜなら、記号に割り当てた意味以外のものは表現出来ないからだ。
「オスのバイソン3頭、うち1頭は既に死んでいる。メスのバイソンは昨日狩った」のような思考のすべてを表現できないと文字とは認められない。
なのでこの論文の中でも、ウルクの原楔形文字(のちに楔形文字に発展していく記号群)を事例として出しているのだ。このオーリニャック文化の記号が、のちに文字に発展し得た可能性がある、と主張しているのだ。実際には発展しなかったのだから、こんな比較は無意味だと思うのだが…。
なぜこういう研究が定期的に出てくるのかについて、うがった見方をするならば、「文字の起源地がメソポタミアとエジプトで、ヨーロッバ人の手柄ではなかった」ことに対する引け目のようなものがあるのではないかと思う。逆の見方をすれば、ヨーロッパにメソポタミアやエジプトよりも古い文字の原型があってくれたほうが嬉しいと考える人たちがいる。
西洋文明の祖だと長らく考えられてきたギリシャ文明がこの両者の後輩だったという概念が定着しはじめてまだ数十年。文明の起源地に関するコンプレックスが根底にあるんじゃなければ、毎回こんな強引なこじつけ理論通してこないと思うのだが、本当に面白いくらい定期的に出てくる。日本でいう神代文字の信奉者に似ているかもしれない。ヘタに科学的な論法の皮を被ってるだけ面倒くさいが。
もちろん、この記号にどのような意味が込められていたかを証明することは不可能である。文字の原型だったことと同様、文字の概念とは無関係を証明する手段もない。
しかし歴史としての「結果」は明らかなのだ。ヨーロッパで文字が使われるようになるのは、先史時代が終わって歴史の領域に入ってからだ。
(ヴィンチャ文字は文字と認めないのが一般的)
なお、文字っぽく見えるが実際には文字ではない、というものとして、たとえば中央アジアで使われていた「タムガ」がある。
自分は、インダス文字も実際には文字ではなくこれと同じカテゴリの記号ではないかと思っている。
中央アジアで生まれた記号「タムガ」についての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/202103article_7.html
文字というのは必要がなければ生まれないもので、メソポタミアでもエジプトでも、「所有財産」という概念から誕生している。
エジプトでは人口調査と家畜頭数調査がきっかけで帳簿をつけるために文字が発展していった経緯がある。文字と、それ生み出すための必然性はセットにして考えるべきだろう。
古代エジプトの数字表記は人口調査のために導入されたものだった、という件。
https://55096962.seesaa.net/article/202111article_16.html
あと、オマケとしてエチオピアにおける文字誕生について。
「文字が生まれる理由」、いつかエチオピアで見た文字と現在のゲエズ文字について
https://55096962.seesaa.net/article/500494362.html