話題のイランにどんな遺跡があるのか見てみよう。「古代オリエントの遺跡と文明」

本屋でこの本を見かけて手にとったのが2月で、「ああ、緊迫してきてるからいい時期に出たなあ」と思ったけど、まさかその直後にこんなことになるとは思っていなかった。いい時期に出た本ではあるが、ジャストタイミング過ぎてしまった本である。
サブタイトル「悠久なるイランと考古学者たち」のとおり、イラン各地の代表的な古代遺跡と、それらに関わる主要な考古学者たちについて紹介した本になっている。

古代オリエントの遺跡と文明 - 安倍雅史
古代オリエントの遺跡と文明 - 安倍雅史

実に丁寧な入門書になっており、序盤で「イランとはどこにあるるのか」「どういう地形で、これまでどういう歴史を歩んできたのか」「代表的な遺跡と研究史はどうなっているのか」といった概要を説明し、そのあと主要な遺跡をピックアップして章立てて紹介している。
著者の専門に近い1,2章がメインで、残りは一般読者の目を引きやすいウルク関連の遺跡や、ペルシアのビッグネームが関わっている遺跡を出してきてるのかと思う。

著者自身が書いているとおり、「イランという国のもつネガティブなイメージを払拭したい」「イランに興味を持ってもらいたい」が目的の本のようなので、目的に合致する構成になっている。
惜しむらくは、時季を逃さないため急いで出版したせいなのか、校正が追いついておらず、日本語がおかしいところや誤字がけっこう多いところだが…。まあ…あと1ヶ月出るのがズレてたらもう戦争始まっちゃってるんで、仕方なかったのかもしれない…。

取り上げられている遺跡は首都から離れているところが多い。湾岸戦争時のイランのように無政府状態になって略奪されるとか無い限り、限りニュースで流れることはおそらく無いだろう。
だが、イランという国を身近に感じるにはいい本だと思う。


なお、本の中でも考古学史として少し触れられているが、現在のイラン政府が革命で誕生する以前には、日本の皇室とも関係が深く、日本人の学者が発掘に行くなど有効的な雰囲気だった時代もある。革命後は色々あって決して国同士の関係が良好とは言えなかった。
(そのへんの話は、三笠宮翁の「古代オリエント史と私」にも出てくる)

私自身、革命政府のことはあまり良く思っていなかったので、今この瞬間も新しく書かれ続けている歴史の1ページを、複雑な気持ちで見守っている。



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本の中に出てくる事項のいくつかは、以前取り上げている。

「エラムとインダスの間」2000年代初頭に盗掘品から発見された未知の文化圏の研究成果が少しずつ明らかに
https://55096962.seesaa.net/article/202103article_6.html

謎多きメディア王国の政治形態は「王なき国家」? 歴史記録が混乱している理由とは
https://55096962.seesaa.net/article/518968563.html

アッシリア帝国/アッシュルバニパルによるエラム攻略戦で撒かれた「塩とsihlu」の正体とは。
https://55096962.seesaa.net/article/512220487.html

これは出てこなかったが、イラン関連なので一緒に置いておく。

ヌーシャバド(Nushabad)の地下都市、古代イランの遺跡。その後、現在までに分かっていること
https://55096962.seesaa.net/article/506366545.html

イランにある巨大遺跡「ゴルガーンの長城」(キジル・アラン)と近年発見された「ガウリ・ウォール」の関係について
https://55096962.seesaa.net/article/520078441.html