古代エジプトの猫はサバトラ・キジトラ。イラストでよく見る「真っ黒な猫」は実はまだ居ないよ…という話。

古代エジプトのイラストに出てくる猫は、真っ黒に描かれることが多い。特にバステト女神の御使いとなる猫だ。
だが、これは実際の猫の毛色ではなく、神像に使われた黒い石、もしくは黒ずんだ古い青銅像からのイメージである。

古代エジプトの猫の毛色は、サバトラ・キジトラだ


↓猫の像
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↓壁画に描かれた実際の猫の姿

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(※ヘビを倒す構図のものについては、習性と模様からサーバルかもしれないという説もある。)

これは、原種となるリビアヤマネコがこういう毛色をしていて、古代エジプト人がそこから家畜化して「イエネコ」を種として作り上げていったことに関連している。

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家畜化が完了したのは中王国時代、紀元前2,000年頃とされるので、家畜化して間もない古代エジプトの時代に人々が見知っていた「猫」が、まだ原種からそれほど遠くない外見をしていたのは当然と言える。
実際に壁画に現れる姿は例外無く、現代で言うサバトラやキジトラに近い色合いなので、古代エジプトの代表的な猫はこれなのだ。

なので、バステト女神の御使いもリビアヤマネコの毛色! 本来はリビアヤマネコの毛色です!
「本来あり得ない特別な毛色」という意味で真っ黒にするとかならアリかなとも思いますが。(それでいくなら、太陽神の眷属だし金色のほうが相応しい気もする)

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なお、飼い猫の起源については最近も何本か論文が出ている。
人間とともに暮らし始めたのは1万2千年くらい前、農耕が開始された直後ではないかとされる。麦作の起源地と考えられるトルコ南部からイランにかけての地域が候補地だ。

しかし、この時代の猫はまだ人間とそれほど親密ではなく、イエネコとして確立されるのはエジプトでまとまって育成されるようになってからだという。
最古のデータは麦作の起源地付近にあるのだが、固有種として確立されたまとまったデータが突出して出現するのはエジプトで、この二系統が混じり合って現在に至る、という結論になっているらしい。

遺伝子の多様性から探る「飼い猫の起源」。猫の家畜化の始まりは農耕開始とともに
https://55096962.seesaa.net/article/494880925.html

Ancient Egyptians may have given cats the personality to conquer the world
https://www.science.org/content/article/ancient-egyptians-may-have-given-cats-personality-conquer-world

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白や黒など、原種にない毛色が突然変異によって登場しはじめるのは、飼育され初めてからかなりあとの時代と考えられている。

つまりは、「黒猫は不吉」のような毛色によって良し悪しをつけたり好みの基準にしたりするのは古代世界には無かった概念だし、毛色によって猫の性格を判断することも出来ず、猫全部がツンデレで気まぐれだった時代なんじゃないかな…とも思うのだ。