楔形文字の書かれた粘土板、焼かれてないやつも多いぞ。焼成されたものだけが残ってるわけじゃないよという話

某所で「粘土板は火災で焼けたのでたまたま残ったのです!」みたいな話を見かけて、は? 焼かれてないやつのほういが多いぞ? むしろ焼けてるやつのほうが珍しいんだが…と思ってしまった。

確かに焼かれて出土した粘土板はある。ニネヴェにあった、アッシュールバニパル王の図書館の粘土板は、宮殿が火災に見舞われた際に焼き固められたことで保存状態良く見つかった。対象が図書館だったので大量の粘土板がまとまって出土したのも事実。火災が起きると、パピルスなど別の筆記用具で書かれていただろうものはすべて焼け落ちてしまうので、火災あとから見つかる文書はほとんどすべて粘土板だけなのも事実だと思う。

しかし、この事例が特殊なだけで、毎回都合よく図書館が焼けたりはしない。


たとえば、わりと最近、焼成していない粘土板が見つかった事例もある。
イラクのクルディスタンで、アッシリア帝国時代、紀元前1250年頃の焼成されていない粘土板が保存された時のまま見つかっている。大きな瓶の中に入れられた状態で埋もれていたらしい。

Trove of Assyrian Clay Tablets Unearthed in Iraqi Kurdistan
https://www.biblicalarchaeology.org/daily/ancient-cultures/ancient-near-eastern-world/assyrian-clay-tablets-iraqi-kurdistan/

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また、焼成していない乾かしただけの粘土板を別の粘土で包んで保存するお手紙もあったようで、こんなかんじで皮を被った状態で見つかっているものもある。

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粘土板が保存されるには、土中の湿気が少ないことや、後世に撹乱されていないことが重要で、必ずしも焼かれなくてもいいのだ。


また、重要なポイントとして、焼き固めてしまうと砕くしかなくなり廃棄が超面倒くさい。(陶器を捨てる時のことを想像してほしい。バラバラにして土に埋めても、何十年でもそのまま残っている…)

なので古代人も、粘土板を保存のために焼くことはそれほど頻繁では無かったと思われる。よっぽど保存したいものとか、神殿に奉納する宣誓書みたいな長期保管を前提としたものくらいじゃないかな…。
そもそもメソポタミア、雨が少ない地域なので、日干ししただけでも粘土板が勝手に崩れることは無かったと思われる。川に近い遺跡以外なら、土中に埋めてあるものでもある程度は残るんじゃないかな。実際、日干しレンガの遺構が結構残っているくらいなので…。