例年通り潜入してきた/第33回 西アジア発掘調査報告会 メモ

今年もそろりと参加。アジェンダ一覧はこちら。
2日間フルで聞くのはさすがにムリだったので、聞けた範囲だけメモを残しておく。

********************

冒頭イスラエルに関する声明を読み上げていた。被害を受けてる地域が発掘対象だし、さすがにスルーはしなかったなという感想。去年より長くその話をしていたのも、現在の湾岸危機で発掘どころじゃなくなってる危機感の表れかと。
ここの部分は声割れ・音量不足などであまり聞き取れず ※毎年恒例、冒頭音声トラブル

御本人がここ見に来てしょんぼりされてもアレなのでどの回が良かった悪かったとかは言わないんですけど、喋り方の上手い下手、声のハリ具合とかで聞き取りやすさが人によって全然違ってて、プレゼンの勉強にもなったかも。
頭に入りやすいのがうまい発表だと思うんですよね。最近、自分も大人数の前でプレゼンやる機会が増えているので、あれを目指していきたい…。


** 1日目***

1 南コーカサス地方のネアンデルタール人─アゼルバイジャン第16次発掘調査

去年の内容とだいたい被ってそう
ソ連時代にほとんど掘られてしまったが、ネアンデルタールと現生人類の文化層が重なってるかもしれない部分について調べたい
奥の方に一部、最古層が残ってたので、そこを確認中
ネアンデルタールの8-12万年前が最古だったが、それより下があるかどうか。
この遺跡はムステリアン石器が出ていないのでそこを確認したいとのこと、今後に期待


2 石灰岩の丘に暮らした狩猟採集民─トルコ、チャクマックテペ遺跡第 5次調査(2025年)─

ギョベックリ・テペに関連していそうな遺跡の発掘、同等もしくは少し古いかもしれないとのこと
同じ集落内で建物の建て方ら統一性がないのが面白い。時代がずれてるとか、各自適当に建てていったとか?
平面図が街作りゲームの初期あるあるすぎるw 障害物を避けて空いてるとこに適当に建物突っ込んでいくとこうなるよな…
カバっぽい石製の動物が作られていたんだけど、カバはアナトリアにいない。あれは何?? 説明なかったけど…あれは何???
シャンウルファの博物館、去年のトルコ行きで遠すぎて断念した部分なのでいつか行きたい


3 南東アナトリア先土器新石器時代の丘上遺跡─ハルベトスワン・テペシ遺跡の第4次調査(2025年)

遺跡は小さい、村から山を越えて通っていた
トルコ南部の平原広すぎるなあという感じ。写真だけだと、丘陵ぜんぶが遺跡に見えてくる
ギョベックリ・テペで有名なT字型石柱はここでも出ているが質量はかなり劣る
アヤンラル・ホユックはようやく今年の夏くらいから発掘するからなにか出てくるかも

1万数千年前の遺跡なので日本でいうと縄文時代の初期、このくらい遡ると当時の人が何考えていたのか、当時の常識がなんだったのかがだいぶ現代とは違いそうで、遺物の解釈難しいなあという印象を受けた


4 中央アナトリアにおける銅石器時代解明へ向けて キュルテペ遺跡中央トレンチ発掘調査(2025年)

レジュメにあった「カイセリ地域のポテンシャルとは」というのがちょっと興味深かった。現在のデータなのだが、どこまで古代に適用できるのかは不確定要素もあるが「キュルテペ遺跡が農耕を基盤にした古代都市ではな
かった事が想起される」というのは現代の風景からすると分かる

アッシリア商人時代の遺跡からしても、位置的にも、通商都市だった可能性は高そうかな
この地域でキュルテペ遺跡が突出しているのは村落が都市に成長したというよりは、最初から都市として作られたというインダス文明パターンなのかな、と個人的には思った

円安で掘る人雇えなくて困ってると言っていたが、円安よりトルコの超絶インフレ事情が関係してると思うんだよな…。


5 南メソポタミア最北部のシュメール初期王朝及びアッカド王朝時代の古代都市遺跡─イラク、テル・シンカー遺跡の地表面調査(2024~2025年度)

まずどの時代にどういう物質文化が築かれていたのか整理することが必要
要するに編年がちゃんと出来てない地域
掘る場所を決めるための前提として表面調査をするのが基本だが今回は表面調査の話、この遺跡がほんとに想定年代か確認する作業
川の水位が上がるとほぼ水没する遺跡らしいので掘ると水が出そうな気もするが大丈夫なんだろうか

落ちてる遺物からすると原ハッスーナまでいくかも?
これから掘るらしいので結果まち


6 南メソポタミア最北部のシュメール初期王朝及びアッカド王朝時代の古代都市遺跡─イラク、テル・シンカー遺跡の地表面調査(2024〜2025年度)

見つかっていない都市アガデを探して。
アガデは人類史上初の統一国家であるアッカド王朝の最重要都市であり、それに応じて規模は大き
いものであったと推測される。テル・シンカーは該当するのでアガデかもしれない、として発掘している
過去に簡易調査は行われているので時代的にも近いが本格的な調査がされたことはないらしい
(バクダットに近いってことは盗掘されてるんじゃない? とはちょっと思ったが…)
想定されているより遺跡の範囲は広いかもしれない

まだ発掘開始したばかりなのでここも結果まち
最近はどこも3Dデジタルで遺跡の状況や地形の保存をしてるから報告がわかりやすくなったなあ



** 2日目***


12 南東アラビアのオアシスにおける考古学的景観
─オマーン、アル=ハジャル遺跡およびユネスコ世界遺産バート遺跡群・アル=アイン遺跡における踏査(2025年春季)


既にユネスコ世界遺産になっているところの追加調査みたいな感じ。崩れた石の山みたいになった古墳の調査。記録から漏れているものも結構あるみたい
風景写真が面白かった。現代の風景だととても人がまとまって住めるようには見えない荒野なので。

揚水に動物を使っていた井戸の遺跡があるとのことだが、ということは水源がかなり深いところにある地域なのかと。家畜を飼い始める以前の石器時代だと気候が湿潤でなければ住めなかっただろうな…。


13 南東アラビア山麓峡谷における山岳牧民の起源を探る─オマーン、タヌーフ地区における考古学調査(2024–2025年)─

あおもいっきりホルムズ海峡近くだなあニュースで見たところ…。
ヤギの糞石が丁寧にパッキングされてる写真はちょっとシュール
衛星写真から遺跡の位置を特定しているのは今どきのやり方
資料に東大のマークあったけど東大の人が関わってるのはどこパートだったんだろう
タヌーフ峡谷にはあまり調査されていないペイントの岩絵があるらしい。その話をくわしく…詳しく聞きたかった…
インドと交易してた時代のカーネリアン遺物が綺麗だった


14 イスラーム時代のヒトとモノの移動を探る─サウジアラビア紅海沿岸ハウラー遺跡の考古学調査(2025)

サウジアラビア沿岸部での発掘だが、コロナなど中断時期があるため、まだあんまり進んでない
街と砦。遺物のでている時期から砦の破壊時期などが分かるかもしれない
サウジが外国隊を入れ始めたの自体がつい最近だし、ぼちぼち基礎からって感じの発掘調査


15 ギザ台地の墓地形成史を探る─エジプト・ギザ西部墓地発掘調査(2025年度)─

以前ニュースになってたマスタバ群のあいだの空白地帯を調べた、という発掘
やっぱ公式の場では太陽の船とは呼ばずクフの船って呼ぶんだw
相変わらずギザ台地の発掘権をもらうために吉村氏を使ってるんだな…コネ社会だもんなエジプト…

5つのマスタバが出てきたが上部は破壊されている
第5王朝前期~中期
いつの時代に破壊されたかは調べたほうがいいと思うけど、そこまでは情報出てこなかった

ランドマークとなっているヘムイウヌウの墓へ続く参道脇からは小さなマスタバ
墓の増改築の履歴があり小さなマスタバでも作り直し何回もしている 被葬者などを一回出してから作り直し
土器を詰め物に再利用してるのはなかなかシュール。まあ廃棄面倒だからな焼き物の破片…。まとめて埋めて土台にするのは合理的


16 アビュドス南における地方ピラミッドとその周辺遺構の発掘調査

謎多き小型ピラミッド・シリーズの一つ、シンキ(セインキ)の小型ピラミッドを調べにいったぞという調査
作られた年代や付属遺跡に不明点が多いので周辺掘ってみた
は古王国末期の土器、ヌビア起源らしきものに、オスマン朝やローマ時代のものも混じってるので地層は撹乱されている
まあ集落近いとこなんで当然とは言える
小型ピラミッドだけに、めちゃめちゃ畑とゴミ捨て場に囲まれてる。世界各国で見てきた現代の遺跡事情あるあるすぎる
周囲に保護柵も作るらしい

発表にポインター使ってほしかったな、オンライン参加だと2画面の発表者の指の動きで察するしかないんで


17 紀元前2千年紀エジプトの葬制の変遷を探る─ダハシュール北遺跡第30次調査(2024〜2025)─

中王国時代と新王国時代の墓が入り混じる地域の発掘
今回は新王国時代メインっぽい


18 ヘレニズム村落の構造を探る─エジプト・イドゥク湖沿岸コーム・アル=ディバーゥ遺跡の考古学調査(2025)

発掘エリアは砂漠の民と農村との境目、メンフィス防衛のためにベドウィンを防ぐ砦などが築かれていたエリア
古代と環境が大きく変わった場所
古代の生活環境の復元に力を入れた研究だなという感じ
生産性の低い低地なのになぜ活発な経済活動が行われていたのか、というのがメインテーマ。(おそらくメンフィスとアレキサンドリアの間だった地理的な要因だろうな…)
このあたりの地域はいろんな時代の遺物が入り混じって出てくるので鑑定大変そうだな…


19 エチオピア南東部の中世イスラーム遺跡群─オロミア州西ハラルゲ県・東バレ県の遺跡踏査報告(2025年)─

珍しく? エチオピア。さすがに治安がアレな北部ではなく南部のほう
オロモ族の伝承にある「ハルラ」が作ったとされる伝承のある建造物や墓などの調査に入っている、将来的には発掘したい
イスラーム時代の遺跡の調査はほとんどない
エチオピアの考古学遺跡の調査はほぼ初になる
デカい遺跡にも関わらずなんの情報もない、近所の人だけは知ってる、みたいなパターンがいまだにある
頑張れば世界遺産になれるかもしれないものも何も調査してないらしい

エチオピアは、北部だけだが過去に行ったことがあるので、「道がない」とか「なんも調査されてない」は、あーね…わかる…ほんとそれ…という感じで聞いていた
歴史的経緯から西洋諸国嫌いだし、日本隊に頑張って欲しいところ

*****

ココマデ