ローマ軍の使用した伝説の兵器「ポリボロス」は実在したか。もしこの仕様なら廃れたのは当然としか…。

ローマ軍の使用した伝説の兵器ポリボロス! 3世紀に転載によって発明された古代のオートマチック・マシンガン!
…と書くとなんだかすごい兵器のように思えるが、実在した証拠はなく、その兵器の系譜が次世代に受け継がれることはなかった。

ビザンチウムのフィロン(紀元前280~220年頃)が『ベロポエイカ』(Βελοποιικά)で記録した内容と名称から、連射式のダーツ(矢)発射装置だったらしいこと、アレクサンドリアのディオニュシオスという人物によって発明されたことは分かっている。

しかし実物は発見されておらず、いままでの再現実験でも軒並み実用に足りないものしか出来ていない。
再現図も色々ある。以下の動画に有名なやつはだいたい入っているので流し見してみるとだいたいの雰囲気は分かるかと思う。

https://youtu.be/LsxkJBxz28w?si=efNWIQGGPtVE0gW6

で、そのポリボロス(Polybolos)なる兵器の痕跡かもしれない城壁の傷がポンペイで見つかっているので分析してみた、という論文が出ていた。

From Pompeii to Rhodes, from Survey to Sources: The Use of Polybolos
https://www.mdpi.com/2571-9408/9/3/96

確かに兵器の傷だとすると特異な痕跡だが、そもそも同時期に兵器でつけられた傷なのかの証拠がない。観点は面白いのだが内容をまるっと信じられるかというと、うーん、仮説の域は出ないねーという感じ。

ただ、内容的には面白いので、いちおうメモがわりに書いておく。
ポリボロスのものではないかとされる痕跡はこれで、深々と石の城壁に何かが突き刺さったらしいあと、それも連続して近い位置に並んだ穴がある。

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これは連射式の兵器によって金属製の矢が連続して深く打ち込まれたために出来た穴だ、というのである。
巻き上げ式のバリスタなどではこのような痕跡にはならないはずだ…とも考察されている。

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しかし、ポリボロスを再現して実際にそれを使い、これに似た痕跡を作れ出せなければ、この穴をポリボロスのものだと言うことは出来ない。
いままでに再現されたポリボロス(仮)では、そもそも殺傷能力の高い実戦に使える兵器が出来ていないらしいので、その前段すらクリア出来ていない。痕跡から逆算して、このような穴を作れるだろう構造物を作り出せるか試してみるのはアリだと思うが。

また、金属製の矢がこれだけ深く壁に突き立ったのなら、石の中に矢じりが残っているが、金属片がこびりついているなどしている可能性が高いが、穴が深すぎて検出は困難だと著者自身も認めている。
石灰岩などでは自然に穴があいているものがもともとあるし、せめて、石材の品質や劣化ではなく人為的な穴だといい切れるなら…。

それと、ポリボロスのものただとされる穴がここにしか残っていないのも不利な状況といえる。
実戦兵器として戦場に出すのなら、一台だけということはあるまい。何十台かは同時稼働していたのでは。記録に残るほど有名で、名前がつけられるほどだったのなら、もっとたくさん、せめて城壁の同じ側一面には同じ兵器による痕跡が沢山残っていないとおかしいのではないか。

もちろん、壁が修復されたとか、古い時代の遺跡なので現在は痕跡が消えてしまっているとか、あるのかもしれないが…。
自分は、これを古代の連射兵器による痕跡と位置づけるのは厳しいなあと思った。


ただ、もしこれが本当にポリボロスのものだったら、この兵器が後世に廃れたのは当然といえる。
穴が5つくらいしかない。つまり同時に連射できる矢は5-6発だった可能性が高い。
しかも矢は、目標に深く刺さりすぎて抜けないので再利用出来ない。金属製の矢じりを使い捨てにするようなものなので、コスパが高すぎる。

高さや幅がバラバラなところからして照準もおそらく甘かっただろうし、仕組みからして繊細で、戦場で組み立てられるのは開発者だけ、ちょっと石が噛んだらすぐ壊れる、とかではなかっただろうか。
これではねいくら威力が高くても使い物にならない。
AoMやAoEなど古代をテーマにした戦争シミュレーションゲームをやったことのある人は分かるだろうが、「威力が高いが建造コストも高い」兵器は非常に使い勝手が悪いのだ。しかも耐久度も低く固定兵器となれば、当然、敵ユニットからは真っ先に狙い撃ちにされる。苦労して設置したわりにすぐ壊されるので意味がない。

複雑な固定式の兵器は、どちらかといえば防衛向きなのだ。もしポリボロスが実在したとしても、遠方への遠征に持っていったとは考えにくく、近場の防衛戦のほうがまだ活用の機会があったのではないかと考える。


というわけで、もしもこの壁面の痕跡がほんとにポリボロスのものだったら、「人馬相手にはめちゃくちゃ殺傷力高い、当たった場合はその周辺の数人は確実に殺せる」「でもそれで打ち止めになる」「壁や鉄板相手ではかなわない」という、かなり中途半端なピーキー兵器だったと言える。

近代でも、二度の世界大戦の際には各国ともに個性豊かな兵器を作っていたが、それと似たものを感じる。
各勢力の入り乱れる戦場において、いかに相手を出し抜ける兵器を開発するか。いつの時代も、工兵や兵器技術者たちは知恵を絞り、創意工夫を重ねていたのだろう。

…もしかしたら1000年後には、イギリス軍伝説のトンデモ兵器「シゼール・バーウィック装甲車」だって、カッコいい煽り文句とともに伝説の兵器になっているかもしれないね?(そこ、「ナイナイ」ってノータイムで手を振らないw ワンチャンあるかもしれないじゃん…)