スペインから出土するエジプト遺物の謎。カルタゴの交易ルート上に拡散した品々について

3000年前の古代エジプトのお守りが何故かまとまってスペインから出土する…これは一体何?! みたいに話題になってる記事を見つけた。
大元の研究は↓これのようだ。護符といってもあまり出来が良くないので、王家の埋葬などに使われたものではなく、輸出用に民間業者が大量生産するか、神殿がお土産用に売っていたもの、出来の悪いものについてはエジプト「風」に別の場所で作られたものと考えられる。

Egyptian Amulets in the Western Mediterranean: The Case of Cadiz
https://www.researchgate.net/publication/370667499_Egyptian_Amulets_in_the_Western_Mediterranean_The_Case_of_Cadiz

こちらの記事だと「Shock」と書かれているが、これたぶん専門家にとっては既知の事象で、本にも載ってるので新発見というわけではない。
ただ、調べてみれば新事実は出てくるとは思う。

3,000-year-old Egyptian amulet found in Spanish tomb shocks archaeologists
https://www.msn.com/en-in/news/world/3-000-year-old-egyptian-amulet-found-in-spanish-tomb-shocks-archaeologists/ar-AA2203wO

今回の研究の面白いところは、「フェニキア人の入植地カディスの墓からいっぱい出てくるので、エジプト産の護符が葬儀に使われていたっぽい」というところだ。崇めていた神は違うと思われるのに、なぜエジプトの護符を持って墓に入ったのか。
現代でも「古代エジプトの魔術」というと何やら神秘的で効きそうなイメージがあるが、古代人にとっても、「古代エジプトの護符」といえば霊あらたかで効きそうなイメージがあったのかもしれない。


ちなみに、西の最遠だとなんとアイルランドからもエジプト遺物は見つかっている。
(逆の東側だとインド)

アイルランドの青銅器時代出土のエジプトファイアンス、その輸送経路がだいたい判った
https://55096962.seesaa.net/site/pc/preview/entry

このときに調べたとおり、紀元前1千年紀には、フェニキア人の商人たち(そしてフェニキア人の作った国カルタゴ)が頻繁に行き来していたのである。この時代の交易は、沿岸沿いにA都市からB都市、C都市と回遊していくのが基本。A都市では安く買えるがB都市では生産していないので高く売れる、といった品を順番に交易して差額で儲けていくスタイルである。

なので、経由地のエジプトで買い込んだ品をエジプトから遠いところで卸すりは理にかなっている。チュニジアあたりまでは直接エジプトと交易できるが、それ以上遠くになると自力で交易出来ないので、エジプト産の品の価値が大きく上がったはずだ。

エジプト産の品がカルタゴ都市から出てくる理由は、こうして商人たちの活動によって説明出来る。問題は、彼らがエジプトの護符にどのような価値を持たせ、いくら位で取引し、どんな意図を持って使っていたのか、ということ…。今回の研究の肝でもあるが、これは護符の傾向や出土状況のデータを積み重ねて可能性の高い答えを探るしかないのだろう。

アンクやウジャト、神々の像とか、日本人でもない人たちに神社のお守りが売れまくってるのに近い状態なので、冷静に考えると良くわからない状況ではあるのだ。
研究し甲斐はあると思うので、ぜひ学者さんには頑張っていただきたいところである。