新たに解読された王名表でギルガメシュ王の実在の可能性高まる!→残念ながらそれは証拠にならないやつなんです…
ギルガメッシュとは、古代のメソポタミアにいたとされるウルクの王だ。
実在したとすれば、それは紀元前2,600-2700年頃のこととされている。つまり最大で今から4,700年くらい前。
少し前に、そのギルガメッシュについて「新たに解読された王名表でギルガメシュ王の実在の可能性高まった!」と騒いでいるのを某SNS上でチラ見したのだが、残念ながら…それ可能性高めるものじゃないですね…。
なんでかというと、見つかったのは後世に書かれた文書だから。
日本で言うならば、天皇系譜図の最初のほうに位置する天皇たちの扱いに似ている。
初代の神武天皇から15代目あたりまでは、実在が怪しい、もしくは実在したとして実際の即位年や名前は異なっていただろうと考えるのが定説となっている。この定説は、新たな系譜図が発見されたとしても変わらない。なぜなら、系譜図が作られだしたのは初代が生きていた時代から遠く離れており、後世の資料がいくら増えても証明にはならないからだ。
ギルガメッシュも同様に、王名表が作られ始めるよりずっと以前の存在なので、後世の王名表がいくら発見されても直接的な証拠にはならないのだ。
というわけで、今回のニュースについて見ていこう。
世界最古の文学に登場する英雄「ギルガメッシュ」は実在していた!? 粘土板は何を語る?
https://www.newsweekjapan.jp/articles/-/320674
既にここに書かれているとおり、多くの学者は「別にこれでギルガメッシュの実在の可能性が高まったわけじゃないよなあ…」という対応になっている。
ギルガメッシュが実在したとして功績を記録した文書や、神話的な物語が多く登場するのは、紀元前2,000年頃からで、今回見つかっているのもその時代のものだからだ。
時間が数百年どころではなく大きくズレているため、見つかった文書記録からだけでは実在が証明出来ない。既にギルガメッシュが伝説化され、王名表に組み込まれて以降の資料なら、そりゃ全部ギルガメッシュの名前は出てくるだろうが、テンプレ仕様でそうなってるだけなので、根拠にならないのだ。
さらに、これと同じ現象は、古代エジプトの王名表でも発生している。
初代王メネスの名前は新王国時代以降の王名表では最初に書かれているのがスタンダードなのだが、実在したとされる初期王朝時代に近い古王国時代の王名表には出てこない。というより初期の数人の王たち全員に「メン」の文字がつけられているので、「このメネスは個人名ではなく、初期の王たちの家名とか全員に共通する称号なんじゃないか…?」という説が有力になっている。
実在したとされる時代に近い時代の資料のほうが信頼性が高いのは当然だし、実在したなら近い時代の資料に言及があるべきだ。それが見つからない限り、実在を証明することが出来ない。
ギルガメッシュの実在の可能性が高いとされるのは、後世の王名表に記載されているからではなく、シュメール語の物語「ギルガメッシュとアッガ」で、ギルガメッシュと張り合ったとされるアッガ王のほうの実在がほぼ確実視されているからなのだ。ただしその場合、ギルガメッシュはアッガ王より下に見られており、ウルクは地域の覇権を持っていなかったことになるのだが。
実在のギルガメッシュ・リアル王様の苦悩と叙事詩
https://55096962.seesaa.net/article/201306article_13.html
ギルガメッシュ叙事詩にロバ騎兵らしきものがいる件について
https://55096962.seesaa.net/article/201503article_10.html
実在を証明する/実在した可能性を上げるためには、実際に生きたと考えられる同時代の資料が出てこなければならない。
これはギルガメッシュに限らず、世界どこでも、古代の伝説的な人物を扱う場合に意識しなければならない基本事項となる。
後世の資料をいくら並べても可能性はあくまで可能性でしかないのだ。そして後世の資料から時を遡って都合よく解釈してしまうと歴史は一気にファンタジーに変貌してしまう。
ギルガメッシュの場合は、紀元前2,000年以降の資料が追加で見つかっても可能性を上げることは出来ない。もっと古いシュメール語の資料が出て来たら、「来たか…!(ガタッ)」て立ち上がる時です 笑
******
ギルガメッシュ関連のおまけ
"失われた二十行の復活"ギルガメシュ叙事詩、第五の書板からストーリーが復元される
https://55096962.seesaa.net/article/201510article_8.html
ギルガメシュとエンキドゥのセッ○は、史実としてアリだという話
https://55096962.seesaa.net/article/201612article_22.html
史実とゲームのはざま? ギルガメシュ展に行ってきた
https://55096962.seesaa.net/article/201907article_14.html
あとメソポタミア歴史本おすすめ
タイトルからまた大きく出たな? って感じだけど、ほどよくまとまっていた「メソポタミア全史」
https://55096962.seesaa.net/article/202012article_14.html
実在したとすれば、それは紀元前2,600-2700年頃のこととされている。つまり最大で今から4,700年くらい前。
少し前に、そのギルガメッシュについて「新たに解読された王名表でギルガメシュ王の実在の可能性高まった!」と騒いでいるのを某SNS上でチラ見したのだが、残念ながら…それ可能性高めるものじゃないですね…。
なんでかというと、見つかったのは後世に書かれた文書だから。
日本で言うならば、天皇系譜図の最初のほうに位置する天皇たちの扱いに似ている。
初代の神武天皇から15代目あたりまでは、実在が怪しい、もしくは実在したとして実際の即位年や名前は異なっていただろうと考えるのが定説となっている。この定説は、新たな系譜図が発見されたとしても変わらない。なぜなら、系譜図が作られだしたのは初代が生きていた時代から遠く離れており、後世の資料がいくら増えても証明にはならないからだ。
ギルガメッシュも同様に、王名表が作られ始めるよりずっと以前の存在なので、後世の王名表がいくら発見されても直接的な証拠にはならないのだ。
というわけで、今回のニュースについて見ていこう。
世界最古の文学に登場する英雄「ギルガメッシュ」は実在していた!? 粘土板は何を語る?
https://www.newsweekjapan.jp/articles/-/320674
既にここに書かれているとおり、多くの学者は「別にこれでギルガメッシュの実在の可能性が高まったわけじゃないよなあ…」という対応になっている。
ギルガメッシュが実在したとして功績を記録した文書や、神話的な物語が多く登場するのは、紀元前2,000年頃からで、今回見つかっているのもその時代のものだからだ。
時間が数百年どころではなく大きくズレているため、見つかった文書記録からだけでは実在が証明出来ない。既にギルガメッシュが伝説化され、王名表に組み込まれて以降の資料なら、そりゃ全部ギルガメッシュの名前は出てくるだろうが、テンプレ仕様でそうなってるだけなので、根拠にならないのだ。
さらに、これと同じ現象は、古代エジプトの王名表でも発生している。
初代王メネスの名前は新王国時代以降の王名表では最初に書かれているのがスタンダードなのだが、実在したとされる初期王朝時代に近い古王国時代の王名表には出てこない。というより初期の数人の王たち全員に「メン」の文字がつけられているので、「このメネスは個人名ではなく、初期の王たちの家名とか全員に共通する称号なんじゃないか…?」という説が有力になっている。
実在したとされる時代に近い時代の資料のほうが信頼性が高いのは当然だし、実在したなら近い時代の資料に言及があるべきだ。それが見つからない限り、実在を証明することが出来ない。
ギルガメッシュの実在の可能性が高いとされるのは、後世の王名表に記載されているからではなく、シュメール語の物語「ギルガメッシュとアッガ」で、ギルガメッシュと張り合ったとされるアッガ王のほうの実在がほぼ確実視されているからなのだ。ただしその場合、ギルガメッシュはアッガ王より下に見られており、ウルクは地域の覇権を持っていなかったことになるのだが。
実在のギルガメッシュ・リアル王様の苦悩と叙事詩
https://55096962.seesaa.net/article/201306article_13.html
ギルガメッシュ叙事詩にロバ騎兵らしきものがいる件について
https://55096962.seesaa.net/article/201503article_10.html
実在を証明する/実在した可能性を上げるためには、実際に生きたと考えられる同時代の資料が出てこなければならない。
これはギルガメッシュに限らず、世界どこでも、古代の伝説的な人物を扱う場合に意識しなければならない基本事項となる。
後世の資料をいくら並べても可能性はあくまで可能性でしかないのだ。そして後世の資料から時を遡って都合よく解釈してしまうと歴史は一気にファンタジーに変貌してしまう。
ギルガメッシュの場合は、紀元前2,000年以降の資料が追加で見つかっても可能性を上げることは出来ない。もっと古いシュメール語の資料が出て来たら、「来たか…!(ガタッ)」て立ち上がる時です 笑
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ギルガメッシュ関連のおまけ
"失われた二十行の復活"ギルガメシュ叙事詩、第五の書板からストーリーが復元される
https://55096962.seesaa.net/article/201510article_8.html
ギルガメシュとエンキドゥのセッ○は、史実としてアリだという話
https://55096962.seesaa.net/article/201612article_22.html
史実とゲームのはざま? ギルガメシュ展に行ってきた
https://55096962.seesaa.net/article/201907article_14.html
あとメソポタミア歴史本おすすめ
タイトルからまた大きく出たな? って感じだけど、ほどよくまとまっていた「メソポタミア全史」
https://55096962.seesaa.net/article/202012article_14.html