エジプト人、イギリス・ヨークに立つ? 2世紀後半のローマ要塞から見つかった「コール壺」に秘められた可能性

論文検索で遊んでいたら、面白そうなものが出てきたのでメモしておく。
2世後半のローマ軍要塞跡から、エジプト人が日常的に使っていた小さな壺が出てきたよというお話。この壺は、アイライナーを引くためのコールと呼ばれる墨を入れるもので、コール壺/コール・ポットなどと呼ばれる。
この時代のエジプトは既にローマ属州なので、エジプト人がイギリスまで来ていたか、エジプト駐留経験のあるローマ人が住んでいたかではないかと言われている。

An Egyptian at York?
https://www.cambridge.org/core/journals/britannia/article/abs/an-egyptian-at-york/AC5E8800948FFCABC74AC380D50794D8

A kohl bottle from York may hint at an ancient Egyptian in Roman-Britain
https://phys.org/news/2026-05-kohl-bottle-york-hint-ancient.html

a-kohl-bottle-from-may.jpg

見つかっているものはおそらく庶民向けガラス製品で、博物館で見る品と形は同じなのだが、見た目の印象はだいぶ違う。
王族が使っていたような質の良い一級品の例が↓これ。材質や作りは全然違うが、形状は同じなのが分かると思う。(メトロポリタン博物館所蔵)

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実は発見されたのは1983年から1984年の発掘で、当初は用途不明なまま「小さなガラス製フラスコ」という名前になっていたらしい。
ところが偶然「あれ? これエジプトで出土するやつじゃね?」と気づいた人がいて、今回の話に繋がったのだとか。

ガラスの質が明らかにローマ製ではなく、構造的にも同時代のエジプトで流通しているものに似ているそうなので、エジプトから持ち込んだ可能性が高そうだ。
また、ゴミ捨て場から出てきているそうなので、副葬品の可能性は排除できる。壊れたか、持ち主が死ぬなどして廃棄されたのだろうと考えられる。

同じものが大量に出てきているとかではなく一点もの、かつ他のローマ遺跡ではこの壺は見つからないので、お土産品として流通していたのではなく、誰かが個人的に持ち込んだのだろうとのこと。
果たして、ヨークまでやって来たエジプト人はどんな人だったのか。その人は、イギリスまで来ても故郷の風習どおり目に黒い隈取りを描き続けていたのだろうか。色々と想像が広がる発見なのだった。

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なおエジプトからブリテン島への交易ルートは、ローマ帝国の登場以前から確立されている。
青銅器時代、フェニキア人がエジプト産の品を運んでいた形跡があるのだ。

アイルランドの青銅器時代出土のエジプトファイアンス、その輸送経路がだいたい判った
https://55096962.seesaa.net/article/201707article_8.html

この時代にはさすがに古代エジプト人そのものが遠方まで出かけことは無かったようだが…
ローマ帝国時代ともなると、ローマ人とエジプト人ハーフの兵士とかがいた可能性はあるなと思うのだ。