見つかっている古代の人類ホモ・ナレディは全員女性? 埋葬習慣のありなし論争再び

ホモ・ナレディとは、2013年に南アフリカで新たに発見された大昔のヒトの一種(絶滅済み)である。生きていた期間は、だいたい33万5千年前~23万5千年前くらい。
骨の見つかった場所が洞窟億の狭い場所だったため、意図的に遺体を運んだのでは? 埋葬の最古の痕跡では? という説があった。

謎の人類ホモ・ナレディが死者を埋葬した証拠、最古を10万年更新
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/060800286/

しかし自分は、これには懐疑的だ。理由は以下に書いた通りで、「遺体を引きずり回して狭いところに押し込むのは埋葬とは言わない」、「この場所の地形が数十万年変わっていないと考える根拠は薄い」。

ホモ・ナレディは埋葬の儀式を行ったかどうか、という議論の行方は
https://55096962.seesaa.net/article/202111article_8.html

そして、考古学者たちは「埋葬」という言葉の定義が出来ていない。これはホモ・ナレディのみならず、他のホモ属に対しても起きている問題だ。

ただ遺体をまとめて埋めるだけで「埋葬」と呼べるのか? それ生ゴミをまとめて捨てるのと何が違うの? 証明するべくもない「哀悼の意」を想像で断定するのは科学的な手続きとは言えないのだ。なので最低限「これがあれば埋葬の手続きとみなす」という統一基準を設けてから論じなければ意味をなさない。

初期ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの埋葬形態が違う→ネアンデルタールのは埋葬じゃないのでは…?
https://55096962.seesaa.net/article/505767951.html

――という前提を踏まえた上で、今回出てきた論文「見つかっているホモ・ナレディの骨はぜんぶ女性」というものと、「なので女性だけをここに埋葬する習慣があったはず…!」という考察についてツッコミを入れておきたい。

論文

Proteomic analysis of dental enamel from 20 Homo naledi individuals shows no male markers
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(26)00644-6?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867426006446%3Fshowall%3Dtrue

まず、論文本体の歯のエナメル質からの分析で、男性マーカーが出なかったというのはいいとしよう。なにぶん古い骨なのでDNAとかの採取は困難で、見込みがないので、調べられる範囲で調べるのはアリだ。既にマーカー自体が壊れていて男性とも女性と判別がつかなくなっている可能性はあるが、いったん結果として受け入れるとする。

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その上で、以下の記事にあるような「20体の骨がぜんぶ女性だから、ここは女性だけの埋葬に使ったかしれない。埋葬に特別な意味があっただろう」という考察をするのが妥当かというと、そうは言えない。なぜなら、これらの骨がすべて近い時代に死んだものかどうかが分からないからである。

'A weird result from an already weird hominin': Archaeologists discover all Homo naledi skeletons found in South African cave are female
https://www.livescience.com/archaeology/human-evolution/a-weird-result-from-an-already-weird-hominin-archaeologists-discover-all-homo-naledi-skeletons-found-in-south-african-cave-are-female

女性だけをここに埋葬する習慣があった、と言うためには、少なくとも、これらの骨の全てが同一集団に属した近い時代の骨だと言えなければならない。
しかし、そんな証拠は何もない。この近くに住み続けて数千年離れた時代の骨がまぎれているかもしれないし、たまたま住みやすい洞窟だったので、別々の群れからここにやってきた人たちが定期的に死んでた、とかかもしれない。

それに死因も分からないのだ。ここで死んだのか、他の場所で死んで運ばれてきたのか。ここで死んだなら、ホモ・ナレディの生きていた時代のこの場所が、洪水に逢いやすい地形だったり、毒ガスないし二酸化炭素などの重たい空気が溜まりやすい場所だった可能性も無くはない。他の場所で死んでいたとしても、埋葬場所というより死体処分の穴だったかもしれない。

そもそもの話をするならば、どんなに新しく見積もっても20万年前の骨相手に、ほんとに正しい結果が出てるのか? という話もある。変に深読みするから問題がよけい難しくなるのでは。可能性はいくらでもあるし、わからんものはわからんので、保留でいいと思うよこんなん。

しかし一部の考古学者、なんでホモ属の埋葬習慣の有無にこだわりたがるんだろうなあ…。まるで、それこそが人間性の証明であり、死者を悼む気持ちこそが人間らしさである、みたいな。生物なんだから生への情動のほうが強いに決まってんだろ、どんなことをしてでも生き残ろうとする生き汚さこそがヒトのヒトたるゆえんではないのか、と私などは思っているのだが…。

そこは学術的な宗教観の違い、なんですかねえ…。