古代の識字率低い件のあるある勘違い。「人口が多いか少ないかで数%の意味が変わる」

古代エジプト本ではよく、「古代の識字率は数パーセントなのでそんなに多くない」という論調の文章が出てくる。しかし、これをそのまま「人数少なくて貴重だったんだな」と思ってはいけない。

以前書いたとおり、古代エジプトは古代世界で有数の人口集中地域である。数こそ力だよ兄者!! の勢いで、数の暴力で大国にのし上がっていったような地域だ。

ピラミッド作ってた時代の人口は100万人くらいと推定されている。
中王国時代で200万人。プトレマイオス朝終了時代で400万人。
古王国時代以降、官僚制度が確立され、徴税制度が整って各地に書記が配置されるようになると文字を書ける人口が一気に増えたとされる。

計算してみてほしいのだが、もし200万人のうち数%が書記だったら何人くらいなのか。
3%とすれば6万人である。

プトレマイオス朝終了時点の400万人の人口から計算すれば12万人。

全然少なくない。

ちなみに、エジプトの税収は州単位。州の数は最大で42。各州に1,000人ずつ文字の書ける役人を配置するとそれだけで4万2千人必要だ。他に神殿に仕える書記や王宮専属の書記などもいただろうから、税収管理と官僚制度、その他もろもろの維持のために必要な人数を確保するためには、常時5-6万人は文字書ける人がいないと難しいだろう。
そして、これら大量の書記を維持するために、各地に書記学校も作られていたことが分かっている。

識字率が数パーセント、と聞いて、少ないなと思ってはいけない…。
母体となる人口が多い地域での数パーセントは人数多い…。

ちなみに中の人の持っているまあまあ難易度高めの資格で比較すると、「ネットワークスペシャリスト」はこれまでの合格者水の累計が5万人くらいとされ、「PMP」は会員数5万7千人なので、時代によっては古代エジプトの書記の人数のほうが多かった可能性がある。


一方で、もともとの人口が少ない文化圏では、識字率数パーセントはほんとに少ない。

ユダ王国の人口は10万人くらいだったとされ、3%だと5,000人。古いヘブライ語資料は書き手がかなり少なかったことを示しており、高級官僚から職人の書いたものまで残っている古代エジプト語資料の幅広さに比べると、限られた人数で文化を維持していたことが伺える。

古代エジプト語の資料の残りがいいのは、乾燥した気候に加えて、そもそもの書き手の母数が多く、大量の書き物が生産されたことが理由だろう、と思うのだ。