古代エジプトの墓、造られた直後は「いい匂い」だった可能性が高いよ。匂いにこだわる埋葬について
古代エジプトの墓、というと、なんか薄暗い地下、かび臭い空間、というイメージが強いと思う。実際、いま観光に行くと、そのイメージどおりの空間が広がっている。
だが、それは造られてから何千年も経っているいまだから、であり、造られた当時はおそらく「いい匂い」もしくは、「清浄な香り」とでも言うべきものが付与されていた。
意外と忘れられがちなのだが、削ったばかりの木工製品はなべて「いい香り」がする。
古代エジプトのミイラを収める棺は、基本的に木製品だ。えらい人の木製の棺は、高価なものだと輸入されたレバノン杉、安上がりなものでもアカシアとかで造られているので、出来たばかりの頃はかなりいい匂いがしていたはずである。
そして、中に収めるミイラには、えらい人ほど高価な品が使われる。乳香や香油、樹脂などは、どれも腐敗した肉の匂いを打ち消すために有効だっただろう。
死体は、どんなに頑張って処理しても多少は臭くなってしまう。
棺が木製品なのも、その不快な匂いをできるだけ打ち消すために採用されたものではないかと思うのだ。
次に葬送儀礼だが、死者の書に描かれる図でもおなじみのとおり、神官は香油や香炉をセットで携えている。
下の図でいちばん左端にいるヒョウの毛皮を纏った人が神官なのだが、右手に聖水壺、左手に香炉を掲げている。同じタイプの香炉は神殿での儀式にも描かれ、空間を清める際に使われていたものと思われる。

葬式の最中も、墓に納棺する時も、この香炉が使われ、絶えず清浄な香りを周囲に焚きしめていた。納棺して封印された直後の墓内部にも、この香炉の匂いが充満していたはずなのだ。
さらに墓の副葬品には、香草系の品がいくつか入れられていたことが想定される。
王墓はほとんど荒らされてしまっていて植物性のものが残っている事例は少ないのだが、たとえば以下のツタンカーメン墓の開封直後を見てほしい。右手の壁際に、何かもっさりとした葉っぱの束のようなものがあるのが分かるだろうか。

これはワニナシ(アボカド)の葉っぱで、けっこうハーブな香りがするやつなのである。
他にもツタンカーメン墓には、各棺の中に念入りに花や植物が入れられていたのだが、構成されている植物を見てみると、蓮、マンドレイク、オリーブ、セロリの仲間など、ハーブ系の、けっこう香りの強いものが多い。
これらは意図的に「腐臭を打ち消すいい匂いのするもの」として選択されていたのではないかと思う。
※なお、昔バラエティ番組などで散々流されていた「ヤグルマギクの花束」は、副葬品の中に実在しない。
それについてはこちらを参照
埋葬に花束や花輪を入れることは一般的だったようで、アメンホテプ1世の棺からも同じように大量に入れられた草花が見つかっている。古代エジプト人は、墓の中の空間を満たす匂いにこだわっていた。そして、死後の永遠の家を、出来る限り「いい匂い」で満たそうとした痕跡が感じられるのである。
というわけで、古代エジプトの墓、造られた直後はいい匂いしてたはずなんですよ。墓泥棒が嗅いだ最初の匂いは、きっと、まだ緑の残る花束の香りとか、まだ新しい棺の匂いだったと思うんですよ。
+++++++
おまけ
古代エジプト都市のニオイとは。乾燥していると臭気はほとんど感じないが。
https://55096962.seesaa.net/article/520705651.html
古代エジプト(プトレマイオス朝)の香水、メンデシアンについての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/511865815.html
古代エジプト人が使った「植物油」についての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/503097017.html
香料を炊いてみた理想と現実:結論「日本だと使いづれえ…」
https://55096962.seesaa.net/article/499802258.html
だが、それは造られてから何千年も経っているいまだから、であり、造られた当時はおそらく「いい匂い」もしくは、「清浄な香り」とでも言うべきものが付与されていた。
意外と忘れられがちなのだが、削ったばかりの木工製品はなべて「いい香り」がする。
古代エジプトのミイラを収める棺は、基本的に木製品だ。えらい人の木製の棺は、高価なものだと輸入されたレバノン杉、安上がりなものでもアカシアとかで造られているので、出来たばかりの頃はかなりいい匂いがしていたはずである。
そして、中に収めるミイラには、えらい人ほど高価な品が使われる。乳香や香油、樹脂などは、どれも腐敗した肉の匂いを打ち消すために有効だっただろう。
死体は、どんなに頑張って処理しても多少は臭くなってしまう。
棺が木製品なのも、その不快な匂いをできるだけ打ち消すために採用されたものではないかと思うのだ。
次に葬送儀礼だが、死者の書に描かれる図でもおなじみのとおり、神官は香油や香炉をセットで携えている。
下の図でいちばん左端にいるヒョウの毛皮を纏った人が神官なのだが、右手に聖水壺、左手に香炉を掲げている。同じタイプの香炉は神殿での儀式にも描かれ、空間を清める際に使われていたものと思われる。
葬式の最中も、墓に納棺する時も、この香炉が使われ、絶えず清浄な香りを周囲に焚きしめていた。納棺して封印された直後の墓内部にも、この香炉の匂いが充満していたはずなのだ。
さらに墓の副葬品には、香草系の品がいくつか入れられていたことが想定される。
王墓はほとんど荒らされてしまっていて植物性のものが残っている事例は少ないのだが、たとえば以下のツタンカーメン墓の開封直後を見てほしい。右手の壁際に、何かもっさりとした葉っぱの束のようなものがあるのが分かるだろうか。
これはワニナシ(アボカド)の葉っぱで、けっこうハーブな香りがするやつなのである。
他にもツタンカーメン墓には、各棺の中に念入りに花や植物が入れられていたのだが、構成されている植物を見てみると、蓮、マンドレイク、オリーブ、セロリの仲間など、ハーブ系の、けっこう香りの強いものが多い。
これらは意図的に「腐臭を打ち消すいい匂いのするもの」として選択されていたのではないかと思う。
※なお、昔バラエティ番組などで散々流されていた「ヤグルマギクの花束」は、副葬品の中に実在しない。
それについてはこちらを参照
埋葬に花束や花輪を入れることは一般的だったようで、アメンホテプ1世の棺からも同じように大量に入れられた草花が見つかっている。古代エジプト人は、墓の中の空間を満たす匂いにこだわっていた。そして、死後の永遠の家を、出来る限り「いい匂い」で満たそうとした痕跡が感じられるのである。
というわけで、古代エジプトの墓、造られた直後はいい匂いしてたはずなんですよ。墓泥棒が嗅いだ最初の匂いは、きっと、まだ緑の残る花束の香りとか、まだ新しい棺の匂いだったと思うんですよ。
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おまけ
古代エジプト都市のニオイとは。乾燥していると臭気はほとんど感じないが。
https://55096962.seesaa.net/article/520705651.html
古代エジプト(プトレマイオス朝)の香水、メンデシアンについての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/511865815.html
古代エジプト人が使った「植物油」についての覚書き
https://55096962.seesaa.net/article/503097017.html
香料を炊いてみた理想と現実:結論「日本だと使いづれえ…」
https://55096962.seesaa.net/article/499802258.html