ヌビア王朝の王位継承は母系か父系か。解釈は色々あるが、見つけた資料を貼っておく
古代エジプトの王位継承は、基本的に「父から息子」である。
しかしヌビアの王朝は母系であるという説が昔から根強くあり、戦略シミュレーションゲームCivでもヌビアは「女王の国」として登場する。
だが、エジプトに倣って設定したファラオ位は常に男性。どっちだよ…と思って、ちょっと資料探しに行ってきた。
日本語の論文でいいのあったので紹介しておく。
クシュの碑文を母系制として読む
- 即位の記録と「アララとアメン・ラーの契約」-
https://www.egyptpro.sci.waseda.ac.jp/pdf%20files/JES20/saito2014.pdf
前提として、ヌビアの王朝は、エジプトの国力が衰え、植民地状態を脱して独自王朝を建てるに至ったところから始まる。我が国が中国の模倣によって朝廷を開始したのと似ていて、エジプトから文字や文化、宗教などを積極的に取り入れて独自王朝を開始する。なのでヒエログリフも使っているし、アメン信仰に帰依していて、王位の正当性を保証するのもアメン神である。
王家の祖先はアメン神と契約し、地上の統治権を得たことにもなっている。
その碑文がタイトルにある「アララとアメン・ラーの契約」。その契約において、アメン神は「王母の肩書きをもつ女性の中から王を選んだ」ことになっており、王母の女系の祖先たちの名が語られる。どうも女性の権威が強そうなのだが、果たしてこれは女系での継承と読んでいいのか…? という話だ。
アフリカには、母系で財産を継承する文化もある。これは動物で言うとライオンの群れとかがメジャーどころで、群れの主はつねにオスだが、オスは全て入り婿なのである。群れの血統の主体、そして群れの主たるオスを選ぶ権利は、メスたちにある。
この論文の出している結論もライオンの群れに近しい解釈で、「母系制の特徴である母方オジから甥への政治的権力の相続が行われていたと考えれば、政治的権力を持つ歴代の王が男性であっても母系制はありうるのである。」という部分が説のようやくとなっている。
つまり、王は男性なのだが、王の正当性を保証するのは女性側の血筋である、という複合的な継承パターンということだ。

ヌビアの王族の肩書に「王の妻」ではなく「王の姉妹」が多く使われている、という理由づけは、なるほどなあと思ったし、王の母方の姉妹の血筋が優先されるというのはアリだなと思った。
ただ、王家の家系図に諸説あるので、これでまるっと全部解決というわけではないと思う。例外的な継承とか、順番飛ばしての継承とかもあり得ただろうしね。
「エジプトの王朝と、それを真似したヌビア王朝の王位継承ルールは違ってた可能性があるよ」ということと、「ヌビアがエジプトを支配していた第25王朝の間だけは、ファラオの王位継承ルールが変わってたかもしれないよ」くらいは認識しておいてもいいかなと思います。
しかしヌビアの王朝は母系であるという説が昔から根強くあり、戦略シミュレーションゲームCivでもヌビアは「女王の国」として登場する。
だが、エジプトに倣って設定したファラオ位は常に男性。どっちだよ…と思って、ちょっと資料探しに行ってきた。
日本語の論文でいいのあったので紹介しておく。
クシュの碑文を母系制として読む
- 即位の記録と「アララとアメン・ラーの契約」-
https://www.egyptpro.sci.waseda.ac.jp/pdf%20files/JES20/saito2014.pdf
前提として、ヌビアの王朝は、エジプトの国力が衰え、植民地状態を脱して独自王朝を建てるに至ったところから始まる。我が国が中国の模倣によって朝廷を開始したのと似ていて、エジプトから文字や文化、宗教などを積極的に取り入れて独自王朝を開始する。なのでヒエログリフも使っているし、アメン信仰に帰依していて、王位の正当性を保証するのもアメン神である。
王家の祖先はアメン神と契約し、地上の統治権を得たことにもなっている。
その碑文がタイトルにある「アララとアメン・ラーの契約」。その契約において、アメン神は「王母の肩書きをもつ女性の中から王を選んだ」ことになっており、王母の女系の祖先たちの名が語られる。どうも女性の権威が強そうなのだが、果たしてこれは女系での継承と読んでいいのか…? という話だ。
アフリカには、母系で財産を継承する文化もある。これは動物で言うとライオンの群れとかがメジャーどころで、群れの主はつねにオスだが、オスは全て入り婿なのである。群れの血統の主体、そして群れの主たるオスを選ぶ権利は、メスたちにある。
この論文の出している結論もライオンの群れに近しい解釈で、「母系制の特徴である母方オジから甥への政治的権力の相続が行われていたと考えれば、政治的権力を持つ歴代の王が男性であっても母系制はありうるのである。」という部分が説のようやくとなっている。
つまり、王は男性なのだが、王の正当性を保証するのは女性側の血筋である、という複合的な継承パターンということだ。
ヌビアの王族の肩書に「王の妻」ではなく「王の姉妹」が多く使われている、という理由づけは、なるほどなあと思ったし、王の母方の姉妹の血筋が優先されるというのはアリだなと思った。
ただ、王家の家系図に諸説あるので、これでまるっと全部解決というわけではないと思う。例外的な継承とか、順番飛ばしての継承とかもあり得ただろうしね。
「エジプトの王朝と、それを真似したヌビア王朝の王位継承ルールは違ってた可能性があるよ」ということと、「ヌビアがエジプトを支配していた第25王朝の間だけは、ファラオの王位継承ルールが変わってたかもしれないよ」くらいは認識しておいてもいいかなと思います。