文庫で復刻されたお手軽入門書「ジャイナ教入門」。不殺の宗教でも、やっぱり派閥争いってあるんだぁ

移動中になにか読むもんないかなーと適当に探していたらよさげな本があったので、いつものごとく適当に手に取り、適当に読んでみた。
日本語の資料がそこそこあるので、日本ではわりと知ってる人の多そうなイメージのある「ジャイナ教」についての概要入門書である。昔出たものの文庫化再販らしい。

ジャイナ教 (講談社学術文庫 2921) - 渡辺 研二
ジャイナ教 (講談社学術文庫 2921) - 渡辺 研二

ジャイナ教の故郷はインドであり、現在もインド以外ではほぼ信仰されていない。インドでも少数派だ。
紀元前6-5世紀まで遡れるといい、仏教とほぼ同時期に誕生しているため、前段階となる哲学的な思想は共通している。ジャイナ教が仏教の一派と勘違いされやすいのもある意味では当然と言える。根底にある思想には共通している部分も置いからだ。

ただ、発展の歴史を追ってみると、仏教とは全然違うなあという感想。
片方が世界宗教となり、もう片方がそうなれなかった理由もなんとなく見えた。

・ひたすら自己救済のための思想
・真面目に実践しようとすると社会生活送れない
・現世におけるご褒美がなく、来世のために現世は苦行する的なノリ

このへんが、あまり信仰の広まらなかった原因だろうと思う。というか、おそらくインテリ層にしか受けなかったのでは。
キリスト教でいうと、グノーシス思想に近いものがある。高尚な思想は分かったが、一般人がこんな理想的な生活するのはムリなのである。

また、厳しい食規制や、殺生をしないために農作業や漁労などですら不可という生活スタイル、禁欲などは、それで食っていける・生活できる階級ならではの話でしかない。
現代でいうとヴィーガンに近い食の規制は、他の人々に食料生産を依存する先進国の高所得層にも似ている。

ジャイナ教については、以前、現代の教義についてちょっと調べたことがあったのだが、この本では教義の内容をさらに細かく詳しく書いてくれているのだが、読んでもピンとこないというか、この生き方をしたいと思うかと言われると即座にNOと言えるくらい無茶。不殺生の概念は仏教にもあるが、なんていうか、現実との折り合いを無視して理想論だけで語った感じの教義だと感じられる。
その点、仏教はいい塩梅で現世との折り合いをつけたのではないだろうか。

それと一つ意外だったのは、ジャイナ教の中に「白衣派」と「無衣派」という二大派閥があり、お互い共通する聖典を持ちながら、お互いを否定しあっている、というところだ。
分裂したのは一世紀頃という話だから、けっこう昔の話である。モノにこだわってはならない、所有欲を捨てなければならない、という基本的な教えに対し、服くらい着ようやというのが白衣派、手加減すんな裸でやれというのが無衣派。

これもまさに、キリスト教における「フィリオクェ問題」、「大シスマ」と同じ構図だ。お互い「お前の解釈が間違えている」と言い張って分断されている。
白衣派は衣類に関する規定だけでなく、散逸した古い聖典をまとめ直したり、女性の解脱を認めていたりと、無衣派よりも世俗に寄り添った形の教義になっているようなので、まあたぶんこっちのほうがとっつきやすそうだ。
ていうか不犯の教義があるからって教祖の娘の存在すら認めないという空衣派は、ちょっと理想に生きすぎているのでは…。

宗教といえば教義の解釈の違いで分裂するのはお約束みたいなものだが、人口的にそんなに多いわけでもなく、禁欲を説く宗教ですら教義へのこだわりで分裂するんだなあ、と、ある意味感心した。まあ不殺・暴力否定の宗教なのでさすがにそれが原因で殺し合いになったりはしていないようだが、争いが無かったわけではないのだろう。


というわけで、ジャイナ教について基本的なところをおさらいするには良い本だった。
仏教との違いについても細かく説明されていたので、その部分についての疑問を持っている人は手にとってみると理解が深まるかもしれない。