エジプトでは、博物館に収蔵された遺物が行方不明になるというイベントが定期的に発生する。
直近では、2011年に発生した「エジプト騒乱」、実質の内乱である。
「アラブの春」と呼ばれる民主化運動で独裁政権を倒したものの、強力な支配者を失った隙間でイスラム過激派の台頭を許して大混乱。その混乱の中で政府組織の建物が焼き討ちされたり博物館…
"人文学"の記事一覧
「日本人は無宗教だ」という言説は多く見かける。本のタイトルからしてその言説を取り扱っているのは自明だが、扱い方が面白い。
日本人が無宗教なのか否かというのは議論するだけ泥沼なのでやらないが、どの時代にも日本人無宗教論が目に付くのは何故なのか。
そもそも、「日本人無宗教」説は、いつから始まっているのか。時代ごとにどう変化してきたの…
宗教コーナーの本だらだら見てたらなんかあったので読んでみた。山の「女人禁制」、今ではほとんど無くなった習慣である。
世界各地を見ても、宗教の場を男性のみ(または女性のみ)、もしくは「未婚の男性」「神官と子ども」などレギュレーションをもうけるケースは少なくない。キリスト教の修道士と修道女が別々の場所で修行しているのなどは、よく知られてい…
粘土板文書の解読は、バラバラになってる破片のパズルから始まる。人の手でやると何十年とかかってしまうのだが、AIを使えば一瞬で出来る! というので、楔型文字文書の解読には、ここ何年かAI利用が盛んになっている。断片化されたテキストの照合が効率化されたことによって、いくつかの未知な文書の発見にも繋がっている。
参考(2019年の記事)…
ヨーロッパからの開拓民が到達する以前のアメリカ大陸で、既にハンセン病患者が存在した、という調査が報告されていた。
かつてはハンセン病は開拓民ととに新大陸に入り込んだ病気の一つだと考えられていたのだが、実はそれ以前からあった、新大陸独自の病気だったことになる。
というわけで、内容が気になったのでちょっと論文を読み込んでみた。
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マンチェスター大学の調査チームが下エジプトの遺跡テル・ネベシャで行った発掘で、かつて州都だった都市イメトの遺構らしきものが色々でてきた、という話があったのでメモがわりに。
The Lost City of Imet Discovered in Egypt
https://colombiaone.com/2025/06/24/lo…
古代エジプト人、それも紀元前2855~2570年という非常に古い時代の人骨からDNAが読み取れた、という論文が出ていた。
この年代が正しいなら初期王朝時代から古王国時代のはじめ頃にあたり、ピラミッド作ってる時代よりも前になる。古代エジプト王国成立まもない時代の遺伝的傾向が読み取れる重要な研究といえる。
この研究によると、分析され…
古代エジプトでは、労働者たちは基本的に穀物でお給料を貰っていた。単位は「ヘカト」か「ヒン」である。
どの時代の、どういう労働者がいくらくらいお給料を貰っていたかの資料は少ないのだが、適当に検索してたら一つ面白そうな記事がヒットしたので、内容をメモしておく。
中王国時代、エジプト最南端のエレファンティネの織物工房での記録である。
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ツタンカーメンの呪いがガンに効くという謎記事を見つけて「???」となった。
Nature Chemical Biologyってそんなオカルト寄りの論文載せる雑誌じゃないんですけど…? どうせ元論文そんな話してなくて、誰かが話膨らませただけでしょ。
と、思ったので大元の論文から読みに行ってきた。
ツタンカーメンの呪いが一筋の…
なんでこれが査読通っちゃったんだろ…査読者の趣味か、議論を呼ぶつもりだったのか…?
という、よくわからん内容で首を傾げながら眺めていた。
トルコの新石器時代の遺跡、チャタル・ホユックに関する研究論文である。
Female lineages and changing kinship patterns in Neolithic Ç…
まずはこちらの年表を見てもらいたい。メソポタミア本ではよく見るタイプの年表だ。
左側に「エジプト」「アッシリア」「バビロニア」「エラム」とある。
エジプトは単体の線になっている。ここはずっと領域国家として運営されていて、たまに他の地域に勢力を伸張したり、逆に攻め込まれたりしているくらいでほぼ変動しない。
アッシリア…
らくだの家畜化について、いつ・どこで・どう家畜化された…みたいな話が、イマイチいい感じの資料が無かったので自分で作っておくことにした。
まず前提として、らくだにはフタコブラクダとヒトコブラクダがある。要するに背中にこぶが1つなのか、2つなのか、である。
フタコブラクダはアジアの砂漠にいる。ヒトコブラクダはアラビア半島や一部はアフ…
アラビア半島の古代文明、というと、一体何を思い浮かべるだろうか。遺跡に興味のある人でさえ、いいとこヨルダンのペトラ遺跡とか、ナバテア人(ナバタイ人)の遺跡、あるいは古代のメソポタミアとの関連でディルムンくらいではないだろうか。ムハンマドが出現して、イスラム教とテスラム帝国が拡大していく時代まで、アラビア半島は歴史ジャンルの中ではマイナー…
ナイル川はエジプトの生命線であり、古代エジプト文明を育んだ源である。サハラ砂漠の東を突っ切っており、衛星写真で見ると川沿いにだけ翠があることがわかりやすい。
赤線引いた部分は、ナイル川のメンフィスより上流、「ナイル渓谷」と言われる部分だ。
川の両側は崖になっており、その崖の間をナイル川が流れている。現在では、渓谷の底を流…
2018年、カナダのオンタリオ州北部で、ルーン文字の刻まれた謎の石が発見された。
ハドソン湾に面した地域での発見となれば、すわヴィンランド・サガか、と言いたくなるところだが、どうもバイキングの残したものにしては新しすぎるぞ。
というわけで調査されていたのだが、結論、1800年代にこの地域にいたスウェーデン人の労働者が、ルーン文字をア…