"人文学"の記事一覧

ヴァイキング兜として有名な「サットン・フーの兜」の製造場所、スウェーデンではなくデンマークかも? という研究が出る

サットン・フーの兜とは、ヴァイキングの兜として有名なコレである。北欧神話本とかヴァイキング本に高確率で出てくるので、見たことある人も多いと思う。 実際には7世紀のものでヴァイキング時代が始まるより少し前だし、見つかっている場所はブリテン島で展示場所も大英博物館。ただ、これ以外に「ヴァイキングの兜」がほとんど残っておらず、完…

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エジプト神話の世界は二元論、秩序「マアト」に対抗する概念「イセフェト」とは

エジプト神話の世界観、古代エジプト人の見ていた世界は、基本的に二元論的な世界である。 「昼」と「夜」、「天」と「地」、「男」と「女」、「生」と「死」。 国土は川沿いの「神々に守護された土地」であり、それ意外の砂漠は「守護なき土地」と考えられていた。 そして世の中は建前上、「善」と「悪」に分かれるものとされ、善を代表する概念が「…

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フェニキア人が来る以前のモロッコはどうだった? より古い時代の遺跡の発掘リザルト

モロッコの沿岸部にあるKach Kouchという場所で近年発掘が行われているのだが、だいぶ掘り下げが進んで、その地点に人が住んだ最古の証拠は紀元前2,200年頃まで遡るという結果が出たそうだ。 この地点はのちにフェニキア人がやってきてカルタゴの勢力圏に入るのだが、それ以前から少数の人は住んでおり、文化が入れ替わる様子が見て取れるようだ…

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ツタンカーメン墓から見つかった杖は、オシリスとして再生復活する儀式のためのもの? →説としては面白いが立証するのは…

ツタンカーメンの墓からは、黄金製品など、よく取り上げられるもの以外にも、バスケットや箱、陶器など、あまり目立たない品がたくさん出ている。それらが、実は葬儀に使われた儀式用の道具だったのでは、という論文が出ていた。 呼んでみた感じ、着眼点としては面白いのだが、思いつきの域を出ておらず、証明するのが難しい説だなぁ…と思った。 ★概要…

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著者の”立場上の言い訳”が面白い。「ファラオ 古代エジプト王権の形成」

本屋を通りかかったら新刊コーナーにエジプト本があったので、流れるように(以下いつもの) 正直、この本は普通のエジプトマニアも初心者にもオススメしない。記述の甘いところが多いのと、これは間違えてるでしょ的な内容もあるのと、自分の専門外はひたすら「xx氏の研究では…」を書き連ねた薄味で、よく知ってるマニアにはあんま面白くないだろうなあと思…

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古代エジプト・民衆にとっての宗教観「古代エジプト人の祈り 信仰のエジプト学」 

新刊情報眺めてたらよさげなのがあったので、さっそく手に取ってみた。似たテーマの本で「古代エジプトの埋葬習慣」を出しているのと同じ著者のエジプト本。王や貴族、上流階級ではなく、古代エジプトの一般庶民たちはどういう民間信仰をしてたのか、というテーマの本である。 古代エジプト人の祈り―信仰のエジプト学 - 和田 浩一郎 (03…

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第18王朝の植民地・ヌビアのトンボスでピラミッドに埋葬されたのは誰なのか。着眼点は面白いけど結論はちょっと甘いのでは

ナイル第三急湍にある新王国時代の要塞都市、トンボス周辺の墓を調べたところ、ピラミッド型の墓に埋葬されているのはエリートじゃなさそうだった、という研究。なので「ピラミッド墓は労働者にも使われたのでは」という結論を出している。 まあこれ、だいぶツッコみどころはあるなと思ったんだけど、今後どこかで取り上げられるかもしれないので、先回りして触…

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ラムセス大王展に来てる「ヒッタイトの盾の鋳型」は、もしかしたらヒッタイト王女のおつきが持ってきたかもしれないという話

現在開催中のラムセス大王展に来ている品の中に、ヒッタイト様式の盾の鋳型、というものがある。 黄金のジュエリーなど派手な展示品などに比べると地味だし、あまり説明もないのでスルーしている人も多かった印象があるのだが、実はこれ、バックグラウンドを知っているとたいへん興味深い品なのである。図録にもそのへん書いてなくてちょっと勿体ない気がしたの…

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エジプト東部Tell el-Maschuta、古代の要塞跡から色々見つかる。

長らくエジプト東部の要所だったTell el-Maschuta、古代名はペル・アトゥム(ペル・テム→旧約聖書でいうピトムとされる※)。 そこの発掘調査で、ラメセス3世の時代の軍司令官の墓が出てきた、というニュースが流れていた。が、実は他にも色々見つかってて、ギリシャ。ローマ時代の兵士たちと思われる墓も一緒に出てきている。 ここは歴代…

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アッシリア帝国/アッシュルバニパルによるエラム攻略戦で撒かれた「塩とsihlu」の正体とは。

にくい敵地を攻略したあとに塩を撒く。というとローマによるカルタゴ攻めを思い出す人も多いかと思うが、「塩を撒いた」という描写はアッシリアの記録にもある。おそらく古代世界の常套句みたいなものだったのではないかと思う。 塩作るのも大変なんで、貴重な塩をわざわざ大量に撒くかっていうと…やらんだろうし…。 ただ、このアッシリアの「塩を撒い…

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エジプトのとこ聞きにいってきた。第32回西アジア発掘調査報告会(2日目)メモ

初日の音声トラブルは2日めは直ってた。 というわけで2日めも聞いたとこメモ。午後はエジプトセクションまでで撤退。 ****** (13)ディルムンを掘る─バハレーン、ワーディー・アッ=サイル考古学プロジェクト 道路の両脇がずーっと古墳、めっちゃ古墳ある。空撮で見るとちょっと気持ち悪いくらい バーレーン狭いもんなあ……

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今年もちょっと聞きに行ってきた。第32回西アジア発掘調査報告会(1日目)メモ

例年紛れ込みにいってる発掘報告会。 イスラエル軍がレバノンやガザに大規模な攻撃を仕掛けたせいで西アジア地域は治安悪くなってるところも多いんですが、ロシアがウクライナにかかりきりなせいでアゼルバイジャンあたりは戦争が停止したって話もあったり。今年はさすがにイスラエルの発表は無さそうだったな…。 一人20分の制限を越えて話し続ける人…

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行き過ぎたポリコレ思想からの揺り戻し、今後の考古学関連研究にも影響があるのかどうか

周知の通り、アメリカでは政権交代を機に、少し前まで支配的だったポリコレ的な思想が急速に払拭されつつある。というか弾圧に近い揺り戻しも起きている。 その中で自分が注目しているのが、女性の権利とかフェミニズムに関する思想である。 実は考古学研究では少し前まで、そうした思想を前面に打ち出した研究が目立っていた。おすすめTopicとかにもよ…

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中国に持ち込まれた最初の飼い猫はシルクロード経由の「白い珍獣」? 最新の調査結果から

数年前、飼い猫の起源に関する研究が出た。猫は農耕の始まりとともに人間の側に居着くようになり、おそらく農耕技術の広まりとともに各地に広まっていった、というものだ。 遺伝子の多様性から探る「飼い猫の起源」。猫の家畜化の始まりは農耕開始とともに https://55096962.seesaa.net/article/494880925…

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古代エジプト(プトレマイオス朝)の香水、メンデシアンについての覚書き

古代都市メンデスは香水が特産で…という話を読んだついでに、その特産だった香水「メンデシアン(Mendesian)」についてメモしておこうと思う。ラテン語ではMendesium。香水が作られたのは、プトレマイオス朝以降の、いわゆるギリシャ・ローマ時代なので、古代エジプトっちゃ古代エジプトなのだが、ファラオの統治した古代からは少し時代がズレ…

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