"人文学"の記事一覧

古代エジプトの生命のしるし「アンク」、その原型について

古代エジプトの生命のしるし「アンク」といえば、見たことある人も多いと思う。こういうやつ。お守りとか、何かのデザインとととかで使われているのをよく見かける。 この印、元がなんだったのか良くわからないと言われることがある。 有力な説としては、元々は「お守りとして使われていた紐の結び目」ではないかというもの。エジプトの歴史の初…

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チャタル・ホユックの女性坐像、かつては「女神」と解釈されていたが今は「年配女性」になっている

チャタル・ホユックはトルコにある、先史時代の遺跡である。 紀元前7,500年頃から居住が開始され、5,500年頃には放棄されていたとされる。石材を使った建築物があること、本格的な農業を行っていなかったにも関わらず高い人口密度で人が住んでいたことなどが特異であり、先史時代の人類史を語る場合や都市文明の発達について論じる場合にはほぼ必ず言…

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「余剰作物」を作るキッカケは何だったのか、古代史の転換期について

かつて、古代史の世界において階級社会の誕生は、「農耕が始まり、余剰作物が生まれることによって生産に関わらない王や神官といった階級が生まれ…」という風に説明されることが多かった。最近では、各地の遺跡から古代世界の実態が分かってきたことにより、この単純化された見方も色々とツッコミが入り始めているが、ここでは古代エジプトの話に特化したい。 …

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イースター島は「モアイ作りすぎて戦争して人口が減った」わけではなかった、という論文と最近のトレンドについて

最近の記事で、「モアイ像のイースター島、DNA分析で通説覆す 文明崩壊なかった?」というものが出ていた。 お約束のように「定説をくつがえす」と書かれているが、毎度おなじみのパターンで、5年位前からもう書き換わりつつあって今回のはダメ出しの論文なんスよ。 https://www.asahi.com/articles/ASS9C1V…

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ラメセス2世の時代は「平和」だったか。ヒッタイトとの条約はあまり平和に関係しないという話

エジプトくわしくない人が「ラメセス2世の時代のエジプトは平和だったはず。大国ヒッタイトと平和条約を結んだから大きな戦争はなかったと思う」と言っていて、えっマジで?軍事王だからめちゃくちゃ遠征してて戦争アリアリの時代だけど? と思ってしまった。 というわけで、知らない人が勘違いしている部分が見えたので、ちょっと解説しておきますね… …

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タイトルのつけかたが秀逸「神聖ローマ帝国 『弱体なる大国』の実像」

タイトルの「弱体なる帝国」と帯の「強くない国家が長く続いたのはなぜか」というのが秀逸だった。 そして開いたとこにある「神聖でもなければローマ的でもなく、そもそも帝国でもない」という18世紀の帝国評を見て、あっこれは分かってる人が書いてるなと思ったので読んでみた。ややこしい存在について綺麗に整理され、読みやすいしわかりやすい本だった。 …

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クフ王の坐像はなぜアビドスから発見されたのか。制作年代にまつわる疑問も提起される

ギザ台地にあれだけデカいピラミッドを作っておきながら、クフ王の「完品の」像は、ほんの7.5センチほどの高さのちんまい像1つしか残されていない。 見たことある人は多いと思う。これである。 しかし、この像は他の王たちのように石材では作られていない。材料は象牙。そして発見地はギザより上流のアビドスである。 アビドスは古来より…

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古代エジプト人が栽培した大根(Radish)は、現代日本人の知る大根(Daikon)ではない、という話

前にも書いたけど、今もわりと勘違いしている人はいるので再掲。 ヨーロッパ・北アフリカで食べられている「大根」は、いわゆるラディッシュのこと。大根とラデッシュは同じ品種から改良されて生まれた仲間だけど、見た目も味もかなり違う。そしてヨーロッパ市場では明確に区別されている。 古代エジプト人がラディッシュの仲間を食べていたことは確かな…

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古代エジプトの青銅器時代っていつからよ? というのをちょっと調べてみた

銅器と青銅器の違いは、錫を使っているかいないかである。錫を入れるとより固くなり、黄金色になる。耐久性も上がるし色もゴージャス。青銅は、古代世界では人気の金属だった。 だが、錫は採れる場所が非常に限られる鉱物だった。 後に鉄器に遅れを取るようになるのも、鉄器のほうが優れていたからというよりは、ほとんどどこでも採れるありふれた鉱物で…

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古代エジプトの「復活の呪文」に出てくる神様は? 最初のピラミッド・テキストより

おさらいとして、エジプトのピラミッドは、内部にビッシリ文字が書かれているものと、書かれていないものがある。 ビッシリ書かれているものは一般に「ピラミッド・テキスト」と呼ばれる、死後の復活のための儀式や請願などの呪文。呪文が最初に登場するのは第5王朝のウナス王のピラミッドであり、それ以降、第8王朝のカカラー・イビィ王のピラミッドまで、合…

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古代エジプトの「水売り」事情、砂漠の国では水汲み人は商売になるという話

日本では昔、「水売り」という商売の話がある。井戸が塩辛い、井戸が枯れやすいなどで良質な水にアクセスしづらい地域の人に水を売る商売があったという。水道の普及とともにこの商売は消えていくが、古代エジプトにも似たような商売があった。 あまり資料に登場することのない、空気のような職業だが、丹念に見ていくと「水運び人」は古代世界において確固たる…

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「シュメール人は何処から来たか分からない謎の民族!」→最近はそこまで謎でもない

一昔前だと、シュメール人やシュメール文化は起源不明で、突然イラン南部にメソポタミアに出現したように書かれていることがあった。 宇宙人と結び付けられる荒唐無稽な話もあったりした。だが、今となってはもうそんなネタは通用しないというか、うっすらとだが、彼らの足取りのようなものが見えてきている。 まず、メソポタミア地域は雨があま…

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下エジプトからサイス朝時代の天文台跡が見つかる。はっきり分かる天文台の発見は初めてらしい

下エジプトの、古代のブートの街付近の遺跡の発掘をしていたチームが、その遺跡は以前思われていたような神殿ではなく、天文台だったことを発見したそうだ。 根拠となるのは ・庭にデカい日時計が見つかった ・二つの塔が作られている ・天文観察に使うメルケトが出土している など。 ※メルケトというのは水平をとりつつ星を観測す…

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大ピラミッド前の世界最古の港近辺から銅汚染の痕跡を発見。長年に渡る銅加工の証拠か

おさらいだが、古代エジプトでピラミッドが作られていた時代は銅が使われていた。(鉄器時代に入るのは1,500年ほど後) 銅はエジプトが実効支配をしていたシナイ半島で採掘されており、紅海沿岸で銅を運んだ港の痕跡と物資台帳のパピルスが見つかっている。おそらく、硬い石最後にを切り離す時の楔や石に彫り込む彫刻、木材加工の道具などに使われていたと…

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人類のオーストラリア遠征6万年前説はおそらく間違い。だが行程の一部は明らかに。

人類がはじめてオーストラリアに渡ったのはいつなのか。 かつては4万年前くらいではとされていたのが、現在では遺跡の調査や先住民のDNAの分析から、5万年までは確実に遡るとされている。この時代、オーストラリアに最も近い陸地はスンダランドと呼ばれるタイからインドネシア付近の島が合体した陸地で、その先は幾つかの島々を挟んでオーストラリアと…

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