"人文学"の記事一覧

エジプトから始まった古代のペスト・パンデミック、「ユスティニアヌスのペスト」の菌がヨルダンで分離される

ペスト(黒死病)のパンデミックは歴史上何度か起きているが、そのうち初回の世界規模の大流行とされる「ユスティニアヌスのペスト」で死亡した遺体から、原因となったペスト菌(Y. pestis)を分離出来たよという論文が出ていた。 分析されたのはヨルダンにあるジェラシュの、ローマ時代の競馬場跡に集団埋葬されたパンデミック発生時の遺体。いわ…

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古代エジプト、ペルシア支配の時代に貢献した神官ウジャホルレスネト、歴史的に美味しいポジションだな…って

古代エジプト末期、王国としての勢力が衰え、新興勢力であるペルシアに押され始める時代が末期王朝。 この時代にエジプトは、2度のペルシアによる支配を経験している。そのうち1回目、「第一次ペルシア支配」または「第二十七王朝」として区分される時代に、エジプト側でペルシアの信頼を得てネゴシエーター的な立ち回りをした人物がいた。 ウジャホル…

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「ラムセス大王展」もいよいよ来週末まで…イチオシの一級品「銀の棺」について ※その後、延長告知あり

★その後、延長告知あり。会期は2026/1/4までに変更されました (あれだろ…大エジプト博物館の開館も延期したから収納先がまだ準備出来てないとかだろ…とちょっと思ったのは内緒) *************************** 豊洲で開催中のラムセス大王展もついにあと10日ほどで閉幕。国宝級の遺物を日本で、至近距離…

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「神の子」と主張出来なかった第19王朝創始ファラオたち、ラメセス2世はいかにして「王権の正当性」を主張したか

まず前提として、古代エジプト、特に新王国時代には、王家の血統は「最高神アメン神の子」である、という主張がなされていた。 古代エジプトの王家は万世一系ではなく、王家の純血的な血筋にこだわりはなかった。近親婚も多かったが、必ずしも兄弟姉妹で結婚していたわけではない。にも関わらず王が王位の正当性を主張出来たのは、王に宿った神が王妃と交わ…

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【n度目の正直】大エジプト博物館、グランドオープン日程が発表される。

7月に正式開館しまぁす! という告知して、一ヶ月前に急に「イスラエルさんが暴れてるので近隣情勢を見て開館延期しまぁす!」とリスケされていた大エジプト博物館のグランドオープン。 もう10年近く、開館するする詐欺で延期されてきたわけですが…今度こそようやく…開館するのか…? ※ここまでの流れおさらい。 新たに発表された開館スケ…

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イングランド/7世紀の墓から西アフリカ系の埋葬が発見される。これ多様性って言っちゃって大丈夫…?

イングランドの7世紀の墓から、西アフリカ系の祖先を持つ人物の骨が見つかった、という話。 場所はイングランド南部のケント州アップダウンとドーセット州ワース・マトラヴァースのニ箇所で、それぞれ1人ずつ西アフリカ系の祖先を持つ人骨が見つかっているらしい。この2人に直接的な血縁関係はなく、母方から遺伝するミトコンドリアDNAは北欧系だが、…

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AIでフェイク遺物が造られ、偽考古学者が解説する。「有識者」の力が試される時代か?

AIの生成したフェイク画像やフェイク動画、いわゆる「ディープフェイク」というものが問題になることが多い時代になってきた。 考古学ジャンルでも、存在しない碑文、存在しない遺物などが「ジョークとして」作られているのはちょくちょく見かけるし、「イメージ画像として」それっぽい遺物が生成されて記事に貼り付けられているのも見たことがある。 …

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ヒッタイトの聖都ジッパランダとされる遺跡ウシャクル・ホユックの発掘調査:ヒッタイト時代の子どもの埋葬とは

かつてエジプトと張り合った大国だった時代もあるヒッタイトだが、首都の位置は分かってるのに、実は他の都市の位置はわりと曖昧である。 記録に残っている都市名と、実際の遺跡とが結びつかないケースが多いのだ。 たとえば、よく出てくる「アリンナ」という都市ですら、位置が確定していない。宗教都市だったとされるジッパランダ、ネリクは「おそらく…

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ワニだらけ。エジプト・エスナ神殿の「セベク神讃歌」はワニのヒエログリフで描かれていた

たまたま見つけてしまったコレ。エジプト中部のエスナ神殿、プトレマイオス朝時代の柱部分に残された、ワニの姿をした神セベク(ソベク)への讃歌なのだが、ワニのヒエログリフだらけで暗号文みたいになっている。というか実際に暗号文である。 まずこれ、ちゃんと文章として理解する学者さんもすごいなって話なんだが、どうしてこんなもの描いちゃったのかとい…

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「史実」とは何なのか。歴史記録に書かれたこと=史実、ではない。という話

辞書で「史実」という言葉を引くと、「歴史上の事実。歴史上、実際にあった事柄」という意味が出てくるだろう。 これは、読んで字のごとくであり、それ以上付け加えることのない説明である。 なのに実際には、誤解された使われ方をしていることが多い。 具体例を上げてみよう。 古代エジプトの王ラメセス2世には、子どもが100人以上いたと…

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いつまでも「自由に」行けると思うな、その遺跡。マチュピチュ入場ルールが複雑怪奇に

ペルーにある天空の都市マチュピチュは、遺跡マニア憧れの古代遺跡の一つ。いつかは行ってみたいと思ってる人も多いと思う。 が、近年はオーバーツーリズムで人が押し寄せすぎたり、SNS向けの「映え」写真狙いで無茶する人が増えたりして、毎年のようにルールが厳しくなってきている。 最近では、入場人数を絞るだけではなく、観光ルートもガチガチに固め…

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たまに出てくる「大ホラーサーン文明」、日本語ででこないので自分で書いておく

「大ホラーサーン文明」とは、the Greater Khorasan Civilization (略してGKC)のこと。 「大ホラーサーン文化」のほうが正しいかもしれないが、日本語訳がみつからなかったのでひとまず「文明」のほうで記載しておく。 これが何かというと、イラン北部からアフガニスタン、トルクメニスタンあたりまでを含む、歴…

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古代メソポタミアの都市は現代人が思うより小さい。実際の都市の大きさを見てみよう

Fate/Grand Order っていうシリーズのアニメにウルクの街出てくるけど、あれ実際のウルクよりデカすぎるんだよ…という話をしたい。 まあそもそもシュメールもバビロニアも全部混ぜちゃってるファンタジー寄りのアニメなので史実を指摘するのもアレなのだが、作中で「巨大で立派な城壁」と「はるか果てまでビッシリと続く住宅街」が出てき…

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ウォーレス線を越える人類。スラウェシ島から見つかった100万年以上前の石器は誰が作ったのか

石器の年代測定が正しければ大発見なのだが、これだけ古いとあってるのかどうかが微妙なので、今後の動向をウォッチする上でもメモしておきたいと思う。 まず前提として、現在インドネシアに属する島嶼地帯のオーストラリアとの境界地域には、ウォーレス線(ウォレス線とも)と呼ばれる境界線が知られている。 これは、過去に海水面が下がっていた時期にも一…

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ジャガイモの遺伝的起源が明らかに。Etuberosumとトマトの自然交配(900万年前)による野生雑種

ジャガイモとトマトは近縁種で、枝接ぎしてポマトという植物を作り出すことが出来る。(トマトとジャガイモ両方がなる) が、姉妹種なのは分かっていても、実際どう進化したのか、詳細までは分かっていなかった。それがだいたい解明されたよ、という話である。 元の論文を読むと分かるが、この研究の重要ポイントはジャガイモの起源が判明したことよりも…

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