古代エジプト・ウナス王の「飢饉のレリーフ」は実際の飢饉ではない可能性あり、飢饉碑文の解釈その他について

まず前提として、エジプトは砂漠の国であり、雨はほとんど降らない。 なので農業はナイル川の水頼りであり、上流のアフリカ中央部の降雨が少なく、ナイルの水位が低すぎる年には収穫が壊滅する危険性があった。には現代のように地下水の組み上げや海水の淡水化などの手法が無い古代世界において、ナイルがさかんに讃えられ、増水を祝う祭りも行われていたのは、…

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ペトラ遺跡のモニュメント「エル・ハズネ(宝物庫)」の下から墓が発見される。遺跡の秘密は明らかになるか

ナバテア人の王国の首都だったペトラ遺跡の、通称「宝物庫」という名前で知られる遺跡の下から、かなり古い墓が見つかったというニュースが流れていた。人骨は12体見つかっている。ペトラ遺跡は墓がいっぱいあるが、中身が残っていた例はほとんどないので、珍しい発見。 まだ、発見されただけで時代や被葬者の特定はされていないっぽいので続報待ちだが、メモ…

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外国人旅行者(主に欧米)の言う「本物の日本」という言葉のグロさ、植民地時代の残滓について

最近たまに聞く、「外国人旅行者は都会でしかない東京や観光地化された京都を嫌い、本物の日本を探しに地方へ行きたがる」という言説。 これ、単に「もっとオリエンタリズムの強い知られざる名所が見たい」って意味だけじゃないです。  「過去」のまま止まった未開地が見たい、ってこと。 もちろん純粋に日本のことが好きで、有名どころはもう回…

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古代メソポタミアの「年の名前」システムについて―「治世●年」ではなく「王がxxした年」で記載

古代メソポタミアには「Year name」、年名という概念がある。 現代のように、歴史的イベントを起点とした「西暦xx年」とか「ヒジュラ暦xx年」という積み上げ方式ではなく、単品のイベントを元にした年名が設定されていたのである。 たとえば、ウル第3王朝の Ibbi-Suen という王の治世の記録を見てみると、こんな感じになってい…

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古代エジプトの職人事情:「銅のノミ」は実は高級品であるという話

銅のノミ、というのは、こういうやつである。まあ、ふつうに現代でも使われる大工道具の「ノミ」ですね。 横にある、木製の大きな槌でカンカン叩いて石を削る。よく出土するのは王家の谷などの岩窟墓の中で、おそらく、暗い墓穴の中で職人が見失ったまま置き去りにされたのだろうと思われる。 ただ、古代世界では銅は貴重品だった。 ディル・…

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ミイラの棺をマトリョーシカ形式に。最上級の埋葬は最大8層

古代エジプトのミイラは、こんな感じでマトリョーシカみたいに何重にも棺を重ねていることがある。 (この写真は第二十五王朝のもの。大英博物館サイトより) 木製の棺は三重までしか見たことがないが、その外側にさらに石製の棺をかぶせていることもある。 この棺重ね、なんのためにやってるのかよくわからんなと思っていたのだが、一説によ…

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エジプト・ミニヤ県の「アクエンアテン博物館(旧:アテン博物館)」、未完成のままランドマークとなってしまう

CGじゃありません。マジでナイル川沿いにこれが建ってます。 元はドイツの支援で2002年に建設の始まった博物館なのですが、エジプトで政変があり、資金難が続き、建設が遅々として進まないまま今に至る。まあ日本の支援で作ってる大エジプト博物館もいまだに開館してないですし、エジプトってそういう国なんで…。 もう20年近く、この姿…

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ケニアに実在した伝説の「人食いライオン」、人食いの裏事情が調査される

19世紀末、まだイギリス領だった当時のケニアで、何十人もの人間を食い殺した伝説の凶悪ライオンが二頭いた。 ケニア~ウガンダ間でイギリスが敷設していたウガンダ鉄道の作業員たちが次々と襲われ、駆除されるまでに人も家畜も大被害を被ったというもの。いわば、アフリカ版「三毛別羆事件」である。 ※概要はWikipediaとかで出てくるので適…

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「お前、あの祠を壊したんか!」→祠を壊すと「祟られる」より「人外さんとの縁が切れる」ほうが多いと思うよ

何故かネットミームと化している「祠を壊す」。「エルフの村を焼く」と同系列のミームかなと思うのだが、なんとなく、創作に出てくる祠の話で、実際に存在する祠の話じゃないな? という気がした。 まず基本事項として、「祠」とは何なのか。 祟り神や悪霊を封じ込めるためのもの、あるいは、かつてそこで起きた災害や悲劇の記憶を留めるも…

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アッラーに滅ぼされたサムード族、何やらしかしたか調べてみた →神のもたらしたラクダ食っちゃった

少し前に、アラブの氏族体系みたいなのを調べていた。その時に、「最初にアラビア語を話していた二大部族」としてアード族とサムード族が上げられており、しかしどちらも神の怒りによって滅ぼされてしまった、という話しが出てきた。 で、アード族については伝承が見つかったのだが、サムード族については滅ぼされた原因が分からなかったので、載ってそうな資料…

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イスラームの黒騎士、アンタラ・イブン・チャダド・アル・アブシ アラビア英雄譚が厨二病をくすぐる件

アラビアの伝承を調べていると、たまに「盗賊詩人」みたいな厨二病全開の人が出てくる。何らかの理由で氏族を追放され、放浪しながらイカした詩を詠む、恋と冒険とロマンスの塊みたいな人物である。 で、その中に「詩人にして黒騎士アンタラ」という、属性もりもりの人を見つけたのでメモしておきたい。 イメージ元 この人物はイスラーム…

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断片資料を頑張って整理した「ハザール 幻のユダヤ教騎馬民族国家」

中の人がハザール人について最初に興味を持ったのは、トルコの軍事博物館にいったとき「偉大なるトルコの祖先たち」の中にハザール人が入れられていた時である。 フン族の王アッティラが匈奴にされ、さらにトルコの祖先に入れられていて「???!」となり、突厥から繋がるハザールもトルコの祖先にされており、なんやこれ…騎馬遊牧民の系統ぜんぶトルコの祖先…

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2000年代初頭の就職事情覚書き。氷河期世代が新卒の頃に見ていた就活とは

氷河期世代、という言葉がある。新卒の頃に就職先がなく、新卒・第二新卒では就職出来ないまま歳を重ねてしまい、今更就職できなくなった人たちの多い世代のことだという。 年代的には1993年から2005年くらいに新卒の就職活動を行った人たち。この世代が厳しかったのは、2009年からリーマンショックによる不景気が再び襲ってきたことで、タイミング…

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南アフリカのサン族が描いた謎の動物は古代生物の化石か? →そもそもこれ動物じゃなくね?

タイトルだけ見ると面白そうな論文だったんだけど、内容見ると、うーん…という感じの論文。 約200年前に南アフリカのサン族が書き残した壁画の謎生物が、近くで出土している古代の単弓類 (Synapsida)の化石を元にして描かれたものでは? という話なのだが、根拠が薄い。 A possible later stone age pai…

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考古学論文と見せかけた巧妙なサツマイモ・キャンペーン「ニュージーランド先住民は南米産サツマイモを栽培してた!」

先行研究としては以下を参照。 ポリネシアで古くから栽培されているサツマイモが、どうも大航海時代に持ち込まれるより古くから存在するらしい→独自に南米と交易したのでは? という説が元々あり、それが最近では確実視されてきている。 ①サツマイモはどこから来たのか。その起源を巡る様々な研究 https://55096962.seesaa…

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